【二十四節気の東洋医学】2025年の「小満」はいつ?季節の不調に対する薬膳・ツボ・養生法とは?

二十四節気の夏の2番目の節気である「小満(しょうまん)」。“小さく満ちる”という名の通り、草木の生命力が満ち、陽気も強くなってくる頃です。初夏とはいえ、晴れの日が多くどんどん暑さが増していくとき。その一方で、梅雨入りも近づいてきます。
そこで小満に最適な薬膳やツボ押し、生活養生などで、暑さによる不調梅雨による不調、それぞれの予防を行っていきましょう。

立夏が過ぎ、二十四節気(にじゅうしせっき)の夏の2番目の節気「小満(しょうまん)」がやってきました。2025年の小満は、5月21日〜6月4日。夏はまだはじまったばかりにも関わらず、早くも陽気が強くなり、草木がどんどん生い茂って生命力が満ちてくることがその名の由来となっています。

小満(5月21日)の日の長さは14時間12分、日の高さ(南中高度)は74.6度。夏至(6月21日~)までまだ1ヶ月ほどありますが、日の長さ・高さともに夏至にほぼ近いレベルまで到達し、夏めいてきました。熱中症などの暑さ対策にも本格的に力を入れていきたい季節です。

しかし一方で、梅雨の気配がじわじわと近づいてくる頃でもあります。本格的な梅雨入りの前に走り梅雨が見られる場合も。雨の季節になると湿気の影響で重だるさめまいなどの不調が現れやすくなるので、この時期から湿気対策にもとり組んでいきましょう。

※日の長さ、日の高さのデータはいずれも2025年の東京の場合です。

二十四節気とは……
節気とは四季をさらに細かく分けた、約15日間の期間のこと。そして二十四節気とは1年を立春から大寒までの24の節気に分けた暦。1年で最も昼が長い日を夏至、最も昼が短い日を冬至と定め、夏至と冬至の中間点で昼と夜が同じ長さになる日を春分秋分と定めて1年を四季に分け、さらにその四季をそれぞれ6等分し、合計24個の節気に分けています。
明治5年までわが国で使用されていた旧暦(太陰太陽暦)では、季節を表す暦として二十四節気が用いられていました。
なお、暦における1年が365日なのに対し、地球が太陽の周りを1周する公転周期は365.2422日で、約6時間の誤差があります。そのため二十四節気の日付は固定しておらず、年によって約1日程度前後することがあります。

①熱中症
陽気がいい時期になりますが、急激に暑くなる日もあり、体が暑さに慣れていないと熱中症になりやすいときでもあります。

②動悸、息切れ
夏は五臓心(しん)の働きがさかんになります。心の主な働きとは心臓や血管の働きですが、暑くなると心拍が高くなり、心臓や血管に負担がかかりやすいため、動悸や息切れが起こりやすくなります。

五臓とは……
五臓とは、人間の体のしくみを大きく5系統に分類した東洋医学の考え方。肝(かん)、心(しん)、脾(ひ)、肺(はい)、腎(じん)の5つがありますが、西洋医学における肝臓、心臓、脾臓、肺、腎臓とその定義や働きはイコールではありません。五臓はそれぞれ季節との関わりも深く、春は肝、夏は心、秋は肺、冬は腎、土用(季節の変わり目の時期)と梅雨は脾の働きがさかんになります。

③体の重だるさ、むくみ、食欲不振
梅雨入りが近づき、天気がぐずつくことも。雨の影響で体内に余分な水分がたまり、重だるさ、むくみ、吐き気、めまい、食欲不振などが現れる場合があります。

小満の薬膳① 熱中症予防として気(き=エネルギー)を補う

小満の季節はまず、熱中症対策として暑熱順化(汗をかくトレーニングをして暑さに慣れること)を行うのと同時に、暑さから体を守るために気(き=エネルギー)をしっかり補いましょう。

気にはさまざまな働きがありますが、特に夏に熱中症対策に必要なのは「推動」「固摂(こせつ)」の働きです。

推動とは体の諸器官や組織などを動かすエネルギーで、内臓の活動、血液の循環、体液の循環・排泄などを行う力となるものです。

一方、固摂とは血液や体液などが漏れないようにするエネルギーで、血液が血管から漏れ出ないようにするほか、汗・尿・唾液などが必要以上に流失しないように分泌量をコントロールする力となっています。

推動と固摂は正反対の力ですが、このふたつがバランスよく働くことで水分代謝が正常にコントロールされています。熱中症対策として重要なもののひとつが発汗のコントロールですが、これにも気の推動や固摂の働きが深く関わっています。また、気は発汗によって消耗されるため、気の不足を防ぐためにもしっかりと補給しましょう。

◉気を補う食材

なつめ

気と血をよく補う食材で、特に発汗に関わる気の働きを整えます。動いていなくても汗が出る寝汗をかくなどの発汗トラブルが見られる場合は特におすすめです。食欲不振などの胃腸の不調も整えます。

はちみつ

胃腸の気を補って胃腸虚弱消化不良食欲不振などをやわらげるほか、発汗をコントロールする気の働きも助けます。体に潤いを補う性質もあるので、のどや皮膚の乾燥が気になるときにも適しています。


そのほか、じゃがいも、ながいも、キャベツ、しいたけ、牛肉、かつおなどが、気を補う食材としておすすめです。

小満の薬膳② 熱中症予防として陰分を補う

熱中症予防にはもうひとつ、発汗による水分不足を防ぐことも大切です。水を飲むことも重要ですが、あわせて体の諸臓器や各組織に陰分(=水分・潤い)を補う食材もよくとるといいでしょう。

◉陰分を補う食材

アスパラガス

体に潤いを補うほか、体内の余分な熱を抑える性質もあります。のどの渇きや痛み、からせき、皮膚のかゆみ、便秘、鼻血などをやわらげます。

たまご

体に陰分と血(けつ≒血液)を補い、のどの渇きや痛み、からせき、口の乾燥、寝汗、胸が落ち着かず眠れないなどの不調をやわらげます。

そのほか、ごま、豚肉、鴨肉、チーズ、ほたて、クコの実などが、陰分を補う食材としておすすめです。

小満の薬膳③ 心の熱をとり、血行を促進する

暑くなると体温も上昇し、血に熱がたまりやすくなります。また、暑さによって血行が活発になるため、心臓や血管に負担がかかりやすくなるときでもあります。

心臓や血管をめぐる血液循環の働きは、五臓の心がつかさどっています。心は体の中で“太陽”のような働きを担い、全身に血液をめぐらせることで各部位に熱を届けて体を温めています。しかし夏の太陽は熱が強すぎるように、体の中の太陽である心にも、夏になると熱が多くたまりやすくなるのです。そのため、暑くなりはじめるこの季節は、心にたまった余分な熱をとり除きましょう。

◉心の余分な熱をとる食材

茶葉(緑茶)

心の余分な熱をとり、頭痛、胸苦しさ、のどの渇き、口内炎などをやわらげます。余分な水分をとる性質もあるので、むくみ、下痢などの改善も助けます。

また、暑くなると血行が活発になりますが、このとき血液がドロドロの状態だと、心臓や血管に負担がかかります。血液のめぐりをよくする養生もあわせてとり入れるといいでしょう。

◉血行をよくする食材

チンゲンサイ

血行をよくする「活血化瘀類(かっけつかおるい)」と呼ばれる食材は体を温める温性のものが多い中、チンゲンサイは活血化瘀類でありながら体をやや冷やす涼性の食材なので、夏の血行促進におすすめです。体内の余分な熱をとる性質もあり、熱感、皮膚の赤みなどをやわらげます。

なす

血行をよくするほか、血液の余分な熱をとる性質もあり、血管への負担をやわらげます。涼性の食材で、暑気あたりの緩和にも役立ちます。

黒豆

黒豆は体を温めも冷やしもしない平性なので、季節を問わずとり入れやすい食材です。体内の余分な水分をとる性質に優れていますが、血行をよくする性質もあり、吹き出物しっしん月経不順などをやわらげます。

小満の薬膳④ 梅雨に備えて体の水はけをよくする

梅雨に入って湿度が高くなると、体内にも余分な水分がたまりやすくなり、その影響で体が重だるい、むくみ、めまい、吐き気、食欲不振、下痢などの不調が現れやすくなります。こうした不調の原因は、体の水はけが悪いこと。体の水はけは、飲食物の水分を吸収したり体内にめぐらせたりする脾(ひ=胃腸)の水分代謝機能が深く関わっています。梅雨に備えて、この時期から体の水はけをよくする養生を行いましょう。

まず、体の水はけをよくするためには、甘いものや脂っこいものを控えめにしましょう。甘いものや脂っこいものは脾の水分代謝機能を低下させやすく、飲食物に含まれる水分が十分に体をめぐらず滞ってたまり、結果、体内に余分な水分をため込みやすくなってしまうのです。
また、冷たい食べ物や飲み物も脾の水分代謝機能を低下させてしまうため、控えめにしましょう。
そして、脾の水分代謝機能を高める食材をよくとるといいでしょう。

◉脾の水分代謝機能を高める食材

大豆

脾の働きを補って水分代謝を高め、利尿作用で体内の余分な水分を排出する性質があります。むくみ、消化不良、下痢、尿の出が悪いなどの不調をやわらげます。

いんげん

気を補って脾の働きを助け、体内の余分な水分をとる食材です。むくみ、尿の出が悪い、肥満などの不調をやわらげます。

はと麦

脾の働きを助けて余分な水分を体外に排出する食材です。むくみ、たんが多い、肌荒れ、尿の出が悪い、下痢などの不調を緩和します。

そのほかの夏の薬膳

◉酸味の食材
東洋医学では、食材や生薬を酸味(さんみ)・苦味(くみ)・甘味(かんみ)・辛味(しんみ)・鹹味(かんみ)という5つの味に分類しています。これを「五味(ごみ)」と呼びます。
このうち酸味に分類されている食材には、収斂作用があり、発汗を抑えて体内の水分を保つ性質があるので、暑さで汗をかきすぎて水分不足になるのを防いでくれます。暑いときは積極的にとることがおすすめです。
酸味の食材には、トマト、キウイフルーツ、マンゴー、いちご、オレンジ、パイナップル、レモンなどがあります。

◉鹹味の食材
鹹味は五味のひとつで「塩からい味」をさし、主に魚貝類や海藻類などが多く分類されています。鹹味の食材は心気を助けるので、特に暑いときはよくとるといいでしょう。いか、たこ、ほたて、あさり、しじみ、わかめ、のり、昆布、ひじき、豚肉などがあります。

◉苦味の食材
苦味は五味のひとつで、主に余分な熱をとる性質や、余分な水分をとる性質などを持つ食材などが分類されています。苦味は心に入りやすい(心に作用しやすい)ことから、夏は苦味の食材がおすすめです。この時期は緑茶、アスパラガス、かぶなどがあります。

◉涼性の食材
東洋医学では、食材や生薬の体を冷やしたり温めたりする性質を、寒性(体をよく冷やす)・涼性(体をやや冷やす)・温性(体をやや温める)・熱性(体をよく温める)に分類しています。これを「四気(しき)」といいます。なお、体を冷やしも温めもしない食材は平性と呼ばれます。
初夏とはいえ、暑い日が多くなってきます。体内に余分な熱がたまらないように、体をほどよく冷やす涼性の食材をよくとるといいでしょう。

小満におすすめの涼性の食材

野菜類……レタス、きゅうり、セロリ、ほうれんそう、小松菜、なす、だいこん、おくら、ミント
果物……マンゴー、オレンジ、びわ
穀類……あわ、大麦、小麦、そば

 

小満におすすめのツボ

◉膻中(だんちゅう)

左右の乳頭を結んだ線の中間点にあるツボ。呼吸や血液循環を行う気の補給を促します。動悸息切れが気になるときにもおすすめです。

◉三陰交(さんいんこう)

足の内くるぶしから指4本分上にあるツボ。婦人科系の不調によく用いられますが、脾の働きを助けて陰分と血を補うツボでもあります。

◉足三里(あしさんり)

ひざの皿の外側の下にあるくぼみから指4本分下にあるツボ。脾の働きを整えて、水分代謝作用を高めます。

小満の生活養生

◉熱中症対策として、本格的に暑くなる前に暑熱順化を行いましょう。暑熱順化とは、汗をかくトレーニングをして暑さに体を慣らすこと。ウォーキングなどの軽い運動や湯船に使って入浴することなどを2週間程度続けると、サラサラした水っぽい汗がかけるようになり、熱を発散しやすい体質に変わります。

◉1日のうちで心の働きが最もさかんになるのは11~13時なので、この時間帯に心に負担をかけないように意識してください。昼食後に軽く昼寝をする、もしくは数分間静かに目をつぶるなどして心を休ませるといいでしょう。深呼吸をすることもおすすめです。

◉陽気が満ちてきているときなので、日光浴をして陽気を吸収しましょう。紫外線対策をしたうえで、15分ほどうつ伏せになって日光浴を。背中は陽気を吸収しやすい場所なので、背中に日光を浴びるのが効果的です。

普段なかなか自然に触れる機会がないという人でも、暦などを通じて自然とつながることができるもの。自然とのつながりは、きっとあなたの心や体を健康へと導く道しるべとなります。

七十二候(しちじゅうにこう)でつながる小満の自然

七十二候(しちじゅうにこう)とは、二十四節気の各節気をそれぞれ約5日ずつ「初候」「次候」「末候」の3つに分け、1年を72の期間に分けた暦です。自然の移ろいがより細やかに、鮮明なビジュアルでイメージできる暦となっています。
2025年の小満は、七十二候で次のように分けられています。

◉初候「蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)」 5月21日~5月25日

蚕(かいこ)が孵化して桑の葉を食べはじめるとき。昼も夜もひたすら桑の葉を食べ続ける蚕は、孵化して約1ヶ月後には絹糸の原料となるまゆを作りはじめます。えさとなる桑の葉漢方薬の原料として用いられているほか、薬膳食材としても利用されており、桑の葉茶は熱かぜや目のかすみ・充血などが気になるときにおすすめです。

◉次候「紅花栄(べにばなさかう)」 5月26日~5月30日

紅花が一面に咲き誇る時期です。紅花の開花時期は秋まきの場合が5~6月頃、春まきの場合は7月頃。かつては紅色の染料や口紅などに使われていました。現在も天然色素として食品に使われたり、食用油の原料にもなっています。東洋医学では紅花は「こうか」と読み、血行をよくする食薬として漢方薬や薬膳に用いられています。

◉末候「麦秋至(むぎのときいたる)」 5月31日~6月4日

麦が実りのときを迎えます。実りの季節は秋であることから、この時期を「麦秋(ばくしゅう)」「麦の秋」などと呼びます。かつて農民は米を年貢として納めなければならず、自分たちの食糧用に麦を育てていました。その麦が収穫できるのがこの時期で、ほっとして小さく満足したことが「小満」の名の由来という説もあります。

次の節気は6月5日~の「芒種(ぼうしゅ)」。いよいよ梅雨入りです。じめじめした気候となりますが、私たちにとって大切な穀類が成長するためには欠かせない季節でもあります。湿気対策を万全にして、心地よく過ごしたいですね。

画像素材:
Adobe Stock、Envato、photoAC、イラストAC

著者プロフィール
TSUBO

国際中医師・国際薬膳師
東洋医学ライター

広島生まれ、東京育ち。2019年より広島県在住。
大学卒業後、雑誌・書籍・WEBコンテンツの編集者をへて、国際薬膳師、国際中医師の資格を取得。現在は「自然と人体のつながり」をテーマに東洋医学ライターとして活動中。

宝島社「大人のおしゃれ手帖WEB」(https://osharetecho.com/)にて「50代のこよみ養生」を連載中。

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