【暦とからだ|夏至】太陽のエネルギーがピークに。精神の高ぶりを抑えて自律神経を整えよう(スマホ・PC壁紙付)

二十四節気「夏至」のイメージ。雲間から太陽の光が差し込む

2026年6月21日~7月6日は、二十四節気の「夏至(げし)」です。昼が最も長くなって脳が興奮状態になる一方で、梅雨の真っ只中にあるため体は重だるい状態。このアンバランスさから、自律神経が乱れやすくなるときです。「体の中の太陽」である「心(しん≒心臓)」をクールダウンする養生で、自律神経を整えていきましょう。

ここでは東洋医学にもとづいて、夏至の自然と人間の体のつながりを独自の視点で探り、季節と調和して自然との一体感を感じられる養生法をご案内していきます。自然の中に私たちの体を、私たちの体の中に自然を見出してみてください。

<前の節気>芒種(ぼうしゅ) 2026年6月6日~6月20日
<次の節気>小暑(しょうしょ) 2026年7月7日~7月22日

夏至は「最も太陽のエネルギーが強くなる季節」

二十四節気「夏至」のイメージ。三重県伊勢市・二見興玉神社(ふたみおきたまじんじゃ)の禊浜(みそぎはま)にある夫婦岩
三重県伊勢市・二見興玉神社(ふたみおきたまじんじゃ)の禊浜(みそぎはま)にある「夫婦岩」。夏至の日(夏至のはじまりの日)になると、夫婦岩の間から昇る朝日の光を受けながら海水を浴びて禊を行う「夏至祭」が行われます。

2026年6月21日~7月6日は、二十四節気の「夏至(げし)」。上半期最後の節気となりました。
夏至は1年で最も昼が長い節気で、日射量が最大になる、太陽のエネルギーが最も強くなる季節です。日がすっかり長くなり、午後7時近くになってもまだまだ明るくて、気分が高揚気味に。時間感覚が狂うような気さえします。

2026~2027年の二十四節気表。2026年の夏至は6月21日~7月6日。
夏至は夏の4番目の節気。早くも夏の節気の後半に入りました。

神道の最高神である天照大神(あまてらすおおみかみ)は太陽の神であることから、古来より夏至は天照大神の力が最も強まるありがたい季節だと考えられてきました。しかし同時に、夏至を境に徐々に夜が長くなりはじめることから、ここから少しずつ太陽のエネルギーが失われて暗い闇が増えていくことへの畏怖も生まれるときだったといいます。

東洋医学には「陽極まれば陰となる」という言葉があります。これは、この世には陰と陽のサイクルがあり、明るくて熱気がある「陽」が極まれば、そこから暗くて冷たい「陰」が生まれ、入れ替わるように勢いを増しはじめるという法則を表す言葉。昔の人々が夏至を迎えたときの心持ちは、まさにこの「陽極まれば陰となる」を体現しています。

そうした背景から、夏至の時期は全国各地の神社で、半年の穢れ(けがれ)を祓い清め、残り半年の無病息災を願う「夏越の大祓(なごしのおおはらえ)」と呼ばれる神事が行われるようになったといわれています。

二十四節気「夏至」のイメージ。夏越しの大祓で神社で行われる茅の輪くぐり
夏越の大祓の神事は毎年6月30日に行われますが、多くの神社では夏至に入る頃から「茅の輪(ちのわ)」が設置されています。 撮影:TSUBO

夏越の大祓といえば「茅の輪くぐり(ちのわくぐり)」です。「茅の輪」とはチガヤというイネ科の多年草で作った大きな輪。チガヤは生命力が非常に強いため、邪気を跳ね返す力があるとされていた植物です。また、チガヤの葉は細長くふちが刃物のように鋭くなっていることから、穢れを切り裂き、祓い清める力があると信じられてきました。

一見ただの雑草のように見えるチガヤにも、昔の人々はこのように霊力を見出してきました。茅の輪くぐりは、八百万の神々を崇めてきた日本人の魂が宿った風習ともいえます。これもひとつの「自然とつながる」形ですね。

二十四節気「夏至」のイメージ。茅の輪くぐりの茅の輪の材料となるチガヤ
チガヤ(茅・千萱)は空き地や土手、河川敷などの日当たりのいい場所に群生する植物。5〜6月頃になると、白銀色のふわふわとした花穂を咲かせます。

茅の輪をくぐるという行為には、「再び母親の胎内をくぐる(胎内くぐり)」という意味もあるといいます。厄を落として新たに生まれ変わる、新しい自分へと再生するための儀式が、茅の輪くぐりというわけです。半年の締めくくりにふさわしい神事といえるでしょう。

【夏至の自然】「光と熱のズレ」が「脳と肉体のズレ」を招く

二十四節気「夏至」のイメージ。雲が浮かぶ青空に昇る太陽
1年で最も昼が長い夏至。全国平均的に日の長さは約14時間半、南中高度は約78~79度になります。

夏至は1年で最も太陽のエネルギーが強い季節だとお伝えしましたが、いまいちピンと来ないという人もきっと多いでしょう。確かに日の長さは1年で最も長くなりますが、梅雨の真っ只中にあるために空が厚い雨雲に覆われている日が多く、日光が強いイメージがあまりありません。

そしてもうひとつ、夏至が太陽とあまり結びつかない理由として、「光と熱のズレ」があります。季節は往々にして光のピークが先行して訪れ、熱のピークは遅れてやってくるもの。夏至は太陽からの日射量が最大になりますが、気温がピークに達するのは大暑から立秋の頃(7月下旬から8月上旬)。これは太陽光が地表や海水を温めて、その熱が空気に伝わって気温が上昇するまでに時間がかかるためであり、光のピークと熱のピークには約1ヶ月〜1ヶ月半ものズレがあるのです。

夏至前後の光のピークと熱(気温)のピークのズレを示したグラフ
太陽のエネルギーが最大になるのは夏至ですが、そのエネルギーが熱に変わるのは約1ヶ月〜1ヶ月半後の大暑から立秋の頃になります。

世間一般では梅雨明け後から夏の到来ムードとなり、本格的に活動的になっていきますが、それは気温のピークが梅雨明け後にやってきて、体感的に夏を感じられるから。しかし脳は光に反応して脳内物質(セロトニン)を分泌するため、光のピークに達する夏至前後になると強い覚醒状態になります。その結果、体は梅雨の湿気で重だるいのに、脳は高揚気味になるというアンバランスな状態を招くのです。

このように夏至は、「光と熱のズレ」によって「脳と肉体のズレ」が起こりやすい季節といえるでしょう。

【夏至の天人合一】「心と脾のズレ」が「脳と肉体のズレ」を招く

二十四節気「夏至」のイメージ。雲が浮かぶ空模様が体の内側にも広がる
私たちの体の中にも自然が広がっている……この考え方を東洋医学では「天人合一(てんじんごういつ)」と呼びます。

天人合一(てんじんごういつ)───これは、「天(自然界)と人間は一体である」という意味の東洋医学の言葉。この天人合一の言葉の通り、夏至の季節に起こる自然の変化と人間の体には、不思議なつながりがあります。

東洋医学には「五臓(ごぞう)」と呼ばれる考え方があります。体の機能を大きく、肝(かん)、心(しん)、脾(ひ)、肺(はい)、腎(じん)の5つに分けたもので、それぞれの主な役割は次の図の通りですが、なかでも心は全身の血流を支配し、精神活動をつかさどることから、五臓のなかで最も重要な生命活動の中心となる臓とされています。

五臓の主な役割
心は五臓を統率する存在であることから、東洋医学では「君主の官」(国における国王のような存在)とも称されています。

この五臓の役割は、そのまま自然界に置き換えることができます(下図参照)。

最も深い場所で生命力を蓄えているは、自然界の深い場所に位置して生命力の根源となる地下水脈
飲食物を消化吸収して栄養や水分を上部へ運搬するは、水分や有機物を吸収分解して栄養に変えて地上の樹木を育む大地。
血を蓄え、気や血を上向きにめぐらせるは、大地から吸収した栄養を幹に蓄え、さらに水分を枝葉まで吸い上げて蒸散する樹木。
体表面に気や水分をめぐらせ、水分などを体の下部へと送るは、水分を上空へとめぐらせ、雲として貯めて、やがて雨を降らす空(大気)
そして、全身の血流を支配し、脈動を通して体全体を温める心の役割は、自然界全体の循環のエネルギー源となる太陽にあたります。

五臓の役割を自然界に置き換えると、腎は地下の水脈、脾は大地、肝は樹木、肺は空(大気)、心は太陽に当たる。
私たちの体のしくみは、自然界のしくみと同じ。そして心は「体の中の太陽」としての役割を持っています。

夏は心の働きがさかんになる季節です。そして太陽のエネルギーが最も強くなる夏至は、「体の中の太陽」である心の働きが最も強くなるとき。心には精神をつかさどる働きもあることから、特に夏至は精神が高揚しやすい時期なのです。

一方、気候自体は梅雨のさなかであり、湿気が多くなっています。湿気は脾に負担をかけやすいため、脾の消化吸収機能や、栄養や水分を体の上部に運搬する働きが低下しがちに。いわば、雨が降りしきりぬかるんで水はけが悪くなった大地のような状態で、脾の働きが悪くなると体内に十分な栄養が行き渡らないために疲れやすく、水分が下半身にたまりやすくなるために体が重だるくなってしまいます。

心の働きが強くなって精神が高揚しやすいのに、脾の働きが停滞するために肉体は重だるい状態に。夏至はこうした「心と脾のズレ」からくる「脳と肉体のズレ」が起こりやすく、焦燥感、不眠、疲労感といった自律神経の乱れが現れやすいときだといえるでしょう。

【夏至の養生法】「心と脾のズレ」を埋めて自律神経を整えよう

夏至の養生におすすめのメニュー、ゴーヤチャンプルー
ゴーヤ(にがうり)は心の興奮をクールダウンしてくれる、夏至におすすめの食材です。

自然界では「光と熱のズレ」が起こり、人体では「心と脾のズレ」が起こる夏至。自律神経の乱れを落ち着かせるには、「心と脾のズレ」を埋めることが養生となります。

「心と脾のズレ」を埋めるためには、まず、高揚する心をクールダウンさせましょう。そして、停滞している脾の働きをサポートして、体の重だるさを軽減していきましょう。心を落ち着かせ、脾の停滞をとり除くことで、「心と脾のズレ」は少なくなって自律神経の乱れもやわらいでいくはずです。

◉夜の光をいつも以上に減らす
夜になったら照明を間接照明にするなど、光量を抑えている人も多いと思いますが、夏至の時期はいつも以上に夜の光を抑えめにして脳への光の刺激を減らしていきましょう。特に、テレビやスマホ、パソコンの画面を見る時間を減らすようにすると、脳に「今はもう休息の時間である」というシグナルを効果的に送ることができます。1年で最も夜が短いときだからこそ、暗い夜をしっかりと味わいましょう。

◉「苦味(くみ)」の食材をとる
薬膳には酸味・苦味(くみ)・甘味(かんみ)・辛味(しんみ)・鹹味(かんみ=しおからい)という5つの味で食材を分類する考え方がありますが、このうち苦味の食材は心に作用しやすいと考えられています。苦味には余分な熱をとる作用があることから、心の高ぶりを冷ます効果が期待できます。おすすめの苦味の食材には、にがうり、緑茶、アスパラガス、かぶなどがあります。

◉「子午覚(しごかく)」を行う
「子午覚」 とは、「子の刻(23時〜深夜1時)」と「午の刻(11時〜13時)」に睡眠をとる養生法。午の刻は心の働きが最もさかんになる時間帯なので、15~30分程度の昼寝をすると、心の高揚を静めることができます。眠らなくても、目をつぶって静かに過ごすだけで十分な養生となります。
一方、子の刻は午の刻から約12時間後にあたり、心の働きが最も低下する時間帯。この時間帯に活動をすると心への大きな負担となるので、23時には就寝して心を休ませましょう。

◉雨に耳を澄ませ、肌で感じる
光の刺激による高揚そのままに行動するのではなく、あえて行動のペースを落としてみましょう。そのためにおすすめなのは、梅雨という季節を耳や肌で感じること。窓を少し開け、目を閉じて光をシャットアウトし、窓から入ってくる湿気を帯びた空気の「重さ」を肌でじっくりと感じながら、雨音や風の音に耳を澄ませましょう。雨音などの自然音には「1/fゆらぎ」と呼ばれる癒やしのリズムが含まれており、自律神経を整えてリラックスを促す効果があることがわかっています。
庭やベランダなど、近くに植物があれば、その植物の葉が弾き返す雨音に耳をそばだててみて。植物は梅雨の間は無理に成長を急がず、静かにじっと水分を蓄えています。雨に打たれる植物の音を聴くことで、そんな植物の佇まいを感じることができ、はやる気持ちが自然と落ち着いてくるでしょう。

◉脾の水はけをよくする食材をとる
体の重だるさを軽くするには、脾の水はけをよくすることがカギとなります。ひとつ前の節気である芒種の養生法で紹介した食材をよくとるといいですが、なかでも今が旬のとうもろこし、冬瓜がおすすめ。とうもろこしは炊き込みごはん、冬瓜はスープ煮物などにとり入れるといいでしょう。

◉塩風呂で水分のめぐりを促す
体の水はけをよくするためには、汗をかくことも大切です。お風呂はシャワーだけですませずに、38~40℃ぐらいのぬるめのお湯にゆっくりつかって、じんわりと汗をかくまで入浴しましょう。天然塩を30〜50g(大さじ2〜3杯)入れた塩風呂なら、ぬるめのお湯でも無理なく適度な発汗を促すことができ、体内で停滞している水分のめぐりをよくすることができます。

おわりに

夏至の自然と体とのつながりの話、いかがでしたでしょうか。
1年で最も太陽のエネルギーが強くなる夏至の日は、1日に置き換えると正午にあたります。
正午といえば昼休み。朝からあれこれと活動していると、お昼の12時を回る頃にはほっと一息つきたくなりますよね。昼休みをとらずにそのまま動き続けてしまうと、午後にバテてしまいます。1日を健康に過ごすためには、正午の昼休みが欠かせません。

同様に夏至もまた、太陽が最も高く昇る“昼休み”にあたる季節。上半期から下半期への折り返しにあたる節気であり、ひと息つきたいときですね。梅雨が明けた後にバテてしまわないためにも、この時期は心身に負荷をかけすぎないように過ごしてみてください。
1年の後半を健康に過ごすためにも、夏至のひと休みはとても大切な養生なのです。

参考文献:
国立天文台HP 暦計算室 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/

『中国伝統医学による食材効能大事典』(山中一男・小池俊治編、東洋学術出版社刊)
『食薬方剤学』(本草薬膳学院刊)

画像素材:
Adobe Stock、Envato、
Canva

夏至の七十二候(※)と月の満ち欠けがチェックできるスマホ用・PC用壁紙です。「自然とのつながり」を感じるツールとして、ダウンロードしてご活用ください。

※七十二候(しちじゅうにこう)とは⋯⋯二十四節気の各節気を約5日ずつ、3つに分けた暦で、気象や動植物の生態の変化にもとづいているのが特徴。約2週間のひとつの節気にもさまざまな変化があり、その変化のグラデーションを色鮮やかに伝えてくれる暦です。

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著者プロフィール
TSUBO

国際中医師・国際薬膳師
東洋医学ライター

広島生まれ、東京育ち。2019年より広島県在住。
大学卒業後、雑誌・書籍・WEBコンテンツの編集者をへて、国際薬膳師、国際中医師の資格を取得。現在は「自然と人体のつながり」をテーマに東洋医学ライターとして活動中。

宝島社「大人のおしゃれ手帖WEB」(https://osharetecho.com/writer/50786/)にて「更年期の養生」を連載中。

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