【暦とからだ|小暑】「冬は不調気味」という人こそ暑中がカギ。「冬病夏治」の養生法(スマホ・PC壁紙付)

二十四節気「小暑(しょうしょ)」のイメージ。青空に太陽が輝き、入道雲(積乱雲)が大きくなりはじめている。

2026年7月7日~7月22日は、二十四節気の「小暑(しょうしょ)」。いよいよ梅雨が明けて、暑さが本番を迎えます。
この時期の養生といえば熱中症や夏バテ対策が中心になりますが、その一方で実は、冷え、かぜ、下痢、こり、腰痛、ひざ痛などの寒さが原因で起こる冬の不調を予防する絶好のタイミングでもあるのをご存じでしょうか?
東洋医学ではこの時期になると、「冬の病は夏に治す」という考えの「冬病夏治(とうびょうかち)」と呼ばれる養生法が推奨されています。なぜ暑い季節に冬の不調予防がうってつけなのか、そしてどんな養生を行えばいいのか、ここで詳しくご紹介していきましょう。

この記事では東洋医学にもとづいて、小暑の自然と人間の体のつながりを独自の視点で探り、季節と調和して自然との一体感を感じられる養生法をご案内していきます。自然の中に私たちの体を、私たちの体の中に自然を見出してみてください。

<前の節気>夏至(げし) 2026年6月21日〜7月6日

小暑は「1年で最も暑い『暑中』がはじまる季節」

二十四節気「小暑(しょうしょ)」のイメージ。真っ青な青空に太陽が輝き、白い入道雲が立ち上がっている。
小暑の日の長さは全国平均的に14時間半前後。夏至より少し昼が短くなったものの、まだまだ1年のなかでも日が長い季節です。

2026年7月7日~7月22日は、二十四節気の「小暑(しょうしょ)」。梅雨の後半から、梅雨明けの暑くなりはじめる頃までの時期にあたります。
小暑と次の節気の「大暑(たいしょ)」は合わせて「暑中(しょちゅう)」と呼ばれる、1年で最も暑い季節。小暑はその「暑中」がはじまる、本格的に暑くなってくる季節です。

2026年~2027年の二十四節気表。夏の5番目の節気、小暑(しょうしょ)は2026年7月7日~7月22日。
小暑は夏の5番目の節気。小暑、大暑は最も暑い「暑中」で、最も寒い「寒中」となる小寒、大寒と対になっています。

1年で最も昼が長かった夏至から約半月。この間、梅雨の真っ只中ではありましたが、毎日約14~15時間という長時間にわたって太陽が昇り、梅雨の晴れ間にはその強い日射しが降り注ぎ大地に熱エネルギーを与え続けてきました。

二十四節気「小暑(しょうしょ)」のイメージ。梅雨の晴れ間に強烈な太陽の光が大地に降り注いでいる
太陽のエネルギーがピークに達していた夏至の時期、梅雨の晴れ間にはその強烈な太陽の熱が大地に降り注いでいました。

春分以降、昼が夜より長くなって太陽の熱エネルギーが少しずつ地下へと浸透してきましたが、夏至を経て小暑を迎えた今、その熱の波は地下数十センチ~1メートル程度の深さまで到達。そして梅雨が明けて暑中に入ると、大地が受けとる熱エネルギーも最大になるため、本格的に熱が深層へと浸透していきます。

土の熱伝導はゆっくりと進むため、太陽の熱が1メートルの深さを浸透するには約1か月かかります。つまり、暑中の期間に大地が浴びた太陽の熱エネルギーが地下1メートルまで進むのは8月、地下2~3メートルまで進むのは9月~10月、4~5メートルの深さまで到達するのは11月~12月。暑中の強大な熱エネルギーは、数か月の時間をかけて地中深くへと蓄えられていきます。

暑中に大地に浴びせられた太陽の熱エネルギーは、約5ヵ月かけて地下5メートル付近まで伝導される
暑中の時期に大地が受けとった太陽の熱エネルギーは、約5か月かけて地下5メートル付近まで浸透。土はひとたび太陽に温められるとなかなか冷めることなく、熱がゆっくりと地中へと伝わっていき、地下深くで温存されます。

【小暑の自然】冬に備えて夏のエネルギーを引き入れる

二十四節気「小暑(しょうしょ)」のイメージ。光合成がピークを迎えている
梅雨が明けて地上への日射量がピークになると、植物の光合成も最大となりエネルギーを増強。そのエネルギーが寒い冬を乗り切る力となります。

暑中に大地が受けとった太陽の熱エネルギー(=陽気)は、12月頃には地下5メートル付近まで浸透します。そしてここまで深く届いた熱は、土の断熱性によって、外気温が下がっても簡単には冷めません。地下深くに蓄えられているからこそ、暑中の陽気が冬になっても温存されているともいえるでしょう。

こうして地下で温存されていた陽気は、寒さが厳しくなる寒中(小寒と大寒)を迎える頃になると地表面に向かってゆっくりと放熱され、冬の極端な気温低下をやわらげています。つまり自然界は、地下深くで温存してきた暑中の陽気によって、寒中の厳しい冬を乗り切っているということなのです。

夏(暑中)に大地が浴びた熱エネルギー(陽気)が地下深くへと熱伝導されていき、その熱が冬(寒中)に地上へと放熱されることで極度の気温低下を防いでいる
暑中から数か月かけて地下深くまで到達した陽気は、最も寒くなる寒中を迎える頃になると、温度の高い方(地下深部)から低い方(地表面)へとゆっくり放熱されはじめます。この深部からの放熱があることで、冬の自然環境がある程度の温かさを保つことができるのです。

もし、夏に大地が陽気を蓄えられなかったら、冬の自然は大地が凍りつくような過酷な極寒の世界となり、人間はもちろん多くの生物が生きながらえることはできなかったでしょう。暑中とは、冬の寒さを生き抜くための強いエネルギーを引き入れる季節であるともいえるわけです。

実はこれと同じような現象が、同時期に植物にも起こっています。
夏至から小暑は最も光合成がさかんになり、植物の成長が著しくなるとき。この時期が1年のうちでも日が長いことがその理由に挙げられますが、光合成をするためには「太陽」だけでは不十分で、そのほかに「二酸化炭素」と「水」という材料が必要です。そのうち水は梅雨の雨によって豊富に得られるので、残る二酸化炭素を最大限に吸収するために、この時期は葉や茎の開口部である「気孔」を1年でも最も長く、大きく開いていきます。

植物の葉や茎の開口部である「気孔」の図。二酸化炭素を吸収する入口となっている。
植物の開口部である「気孔」は、主に葉の裏に多く分布しています。二酸化炭素を吸収する入口になるほか、光合成によって生成される酸素を放出したり、水分を蒸散(水蒸気の形で放出)する出口にもなります。

そうして大量に吸収した二酸化炭素と水から、光合成によって糖(デンプン)をたっぷりと生成して、植物としての体力を蓄えていくのです。

光合成の説明図。夏至~小暑は、大量の太陽エネルギーと二酸化炭素と水から、たっぷりと糖(デンプン)を生成。その余剰分が貯蓄されて冬をしのぐエネルギーとなる。
夏至~小暑でたっぷりと二酸化炭素を吸収し、そこからたっぷりと生成された糖(デンプン)は、やがて秋分を過ぎて夜が昼より長くなりはじめ、光合成が停止すると、その余剰分が根や地下茎などの深部へと送られて貯蔵されます。この蓄えによって植物は冬の寒さをしのぎ、翌春の芽吹きの力へとつないでいきます。

やがて冬がくると、光合成する役目を終えた植物たちは葉を落としていきますが、そこから生命をつなぐのが暑い季節に生み出した豊かなエネルギー(糖)。多くの植物は夏の間に育んだ体力を土台にして冬の厳しい寒さをしのぎ、翌春の芽吹きへとつなげているのです。

大地では太陽の強い熱エネルギーが地下へと浸透しはじめ、植物はエネルギー源となる二酸化炭素を最大限まで吸収して光合成を行う。これらの小暑の自然の様子は、冬に備えて夏のエネルギーを引き入れて力を蓄えている姿といえるでしょう。

【小暑の天人合一】体表面が「開放モード」で、体の奥まで陽気が届きやすい状態に

二十四節気の「小暑(しょうしょ)」のイメージ。自然界に陽気が満ちているのと同じように、人間の体にも陽気が満ちてくる。
私たちの体の中にも自然が広がっている……この考え方を東洋医学では「天人合一(てんじんごういつ)」と呼びます。

天人合一(てんじんごういつ)───これは、「天(自然界)と人間は一体である」という意味の東洋医学の言葉。この天人合一の言葉の通り、小暑の季節に起こる自然の変化と人間の体には、不思議なつながりがあります。

太陽の熱エネルギーである陽気は、昼が最も長い夏至で最高潮に達します。私たちの体は自然の一部なので、私たちの体の中にも陽気が存在し、夏至で最高潮に到達。温かい空気には上昇する性質があるのと同様に、陽気には浮き上がる性質があるため、暑中になると体内で充実した陽気が体表面に浮き上がってきて体の外へ逃げようとします。

私たちの体はその陽気を体外へと逃がすために、毛穴や皮膚のキメを開いて陽気を発散。この反応によって体内の陽気が過剰になって熱がこもるのを防いでいるわけですが、これはいい換えると、この時期は体表面が最も開いている状態になるということ。まさに、気孔を大きく開いている植物と同じように「開放モード」になっているわけです。

暑中に入り、体内の陽気が体表面に浮き上がり、体表面の毛穴やキメが大きく開いて陽気を体外へと発散している。
体内でピークに達した陽気は体表近くまで浮き上がってきます。その熱を体外へ発散するために、体表面の毛穴や皮膚のキメが大きく開いた「開放モード」に。一方で、体の深奥部は陽気が不足して冷えやすくなっています。

毛穴や皮膚のキメが全開になっているということは、体が外気からの影響を非常に受けやすい「無防備な状態」になっているということでもあります。この「無防備な状態」で過度の冷房や冷たい飲食物などの影響を受けると、冷えが体内に侵入しやすいため、体の奥まであっという間に冷え切ってしまうことに。体の奥まで到達した冷えはなかなかとり除くことができないため、そのまま冷えが滞留したまま、体の中心部をジワジワと冷やし続けてしまいます。その結果、冬になると体が芯から冷えて、さまざまな不調が起こりやすくなるのです。

しかし一方で、体が外気からの影響を受けやすい「無防備な状態」ということは、熱エネルギーである陽気を体の奥まで届けやすいときでもあるということ。実はこの時期、陽気が体表面に浮き上がってくるために、体の深奥部は陽気が不足気味。そのため体の奥が冷えやすく、陽気の補給が必要な状態なのです。

そこで東洋医学では、体表面が最も開いているこの時期に、陽気を体の奥まで浸透させて冷えを追い出す「冬病夏治(とうびょうかち)」と呼ばれる養生法が行われます。

東洋医学の養生法である冬病夏治(とうびょうかち)の説明図。
体表面が「開放モード」になっているときだからこそ、陽気を体の奥まで届けて冷えを追い出す「冬病夏治」を行うチャンス。主に食事、入浴、お灸などの方法で陽気を体の深奥部まで浸透させる養生法です。

自然界では、暑中の熱エネルギーが地下深くへと浸透して、冬の寒さをやわらげるように。
暑中に最大限に光合成した植物が、そのエネルギーで寒い冬を乗り切るように。
私たち人間も、体表面が最も開放されているこの季節に体の奥まで陽気を引き入れて冷えを追い出すと、冬になっても冷えにくく不調になりにくい強い体を作ることができると考えられているのです。

【小暑の東洋医学】暑中だからこそ、冬の不調が予防できる

冬病夏治とは文字通り「冬の病を夏に治す」という意味で、「冬の病」とは、冷え、かぜをよくひく、せきが長引く、鼻水・鼻づまり、下痢、こり、腰痛・ひざ痛・関節痛などの冬の寒さが原因の不調のこと。これらの「冬の病」は、いずれも体内の陽気が不足している「陽虚(ようきょ)」という体質の場合に起こりやすく、陽虚を改善するには「補陽(ほよう=陽気を補うこと)」が養生になると考えられています。

体内の陽気が生まれる場所は、「五臓(ごぞう=体の機能を大きく5つに分けた東洋医学の考え方)」のうちで体の最も奥に位置している「腎(じん)」補陽とは、主にこの腎に陽気を補うことをさしています。

東洋医学の冬病夏治(とうびょうかち)の説明図。腎に陽気を補う
冬の不調の多くは、腎の陽気が不足している「陽虚」が原因。自然界に陽気があふれ、体表面が開放モードになっているこの時期は、体の深奥部にある腎に最も陽気を届けやすい季節です。

その陽気が自然界にあふれているのが暑中であり、体が開放モードになっているのも暑中。体の深奥部である腎に陽気を補うためには、この季節に補陽の養生を行うことが最も効果的だということから、冬病夏治が行われるようになりました。

そんな冬病夏治を行うのに特に適しているといわれるのが、「三伏(さんぷく)」の期間。三伏とは、夏の勢いがとても盛んで秋の気を伏する(抑え込む)ほど陽気が強い日のことで、「初伏(しょふく)」「中伏(ちゅうふく)」「末伏(まっぷく)」の3つがあります。
2026年の三伏は次の通りです。

 2026年の三伏(さんぷく)
初伏(しょふく) 7月15日~7月24日
中伏(ちゅうふく) 7月25日~8月13日
末伏(まっぷく) 8月14日~8月23日

この約1か月ちょっとの三伏の期間のなかでも、特に体表面が大きく開放して陽気が奥まで浸透しやすいといわれるのが、初伏・中伏・末伏それぞれの最初の日である7月15日、25日、8月14日の3日間。中国では、この3日間に補陽の効能を持つ生薬を練り込んだ湿布をツボに貼る「三伏貼(さんぷくちょう)」という養生を行うことが古くからの風習として根づいていて、台湾や香港でも同様に行われているそうです。日本でも、三伏貼と同じツボにお灸をすえる「三伏灸(さんぷくきゅう)」を施術している鍼灸院を見つけることができるかもしれません。

ここで昨年の冬を思い出してみてください。どこか調子が悪かったところはありませんでしたか?
もしくは毎年必ず、秋や冬にかぜをひいたりはしていませんか?
この夏は、そうした「冬の病」を克服することを目標にしてみませんか?

小暑の期間では、7月15日から初伏がはじまります。体が最も開放的になって陽気が浸透しやすくなるこの機会に、ぜひ冬病夏治の養生をとり入れてみてください。

【小暑の養生】「水分代謝を高める→陽気を補う」の2ステップで冬病夏治

背中に台座灸をすえている様子
お灸初心者でも扱いやすい、シールで貼るタイプの「台座灸」。小暑の養生にもおすすめです。

小暑の養生は、初伏がはじまる前(7月7日~7月14日)と初伏期間(7月15日~)の2ステップに大きく分かれます。初伏がはじまる前の時期は梅雨の終盤でもあるので、水分代謝を高める養生に力を入れて冬病夏治のための準備をし、初伏がはじまってからは補陽の養生を行いましょう。

特におすすめしたいのは、三伏灸にならったお灸の養生です。シールでペタッと貼ってすえることができる台座灸や火を使わないお灸など、初心者でも気軽にとり入れやすいお灸が市販されているので、この機会にぜひお試しください。

◉初伏がはじまる前(7月7日~7月14日)=水分代謝を高める養生
多くの地域で梅雨の終盤にあたり、体内にも湿気がたまりやすいとき。湿気がたまっていると体表面の毛穴やキメの開きが悪くなり、陽気が体内へと浸透する通り道もつまりやすくなるので、初伏がはじまるまでに次のポイントをおさえて、体内の湿気をしっかりととり除いておきましょう。

「脾(ひ)」に負担がかかる飲食物を控えめに
最も大切なポイントは、「脾(ひ)」に負担をかけないことです。脾とは五臓のひとつで主に胃腸機能をさしますが、東洋医学では脾には水分代謝をつかさどる働きもあると考えられており、脾に負担がかかると水分代謝が低下して体内に余分な水分がたまりやすいとされています。脾に負担がかかる飲食物は、冷たいもの、脂っこいもの、味の濃いもの、甘いもの、乳製品など。まずはこれらを控えめにしてみてください。あわせて、「芒種(ぼうしゅ)」の記事でご紹介した「体の水はけ」をよくする養生法もとり入れるとよりいいでしょう。

軽い発汗で湿気を追い出す
朝や夕方などの比較的涼しい時間帯に軽く散歩をする、38〜40℃のぬるめのお湯にゆっくりつかるなど、じんわりと汗ばむような養生をとり入れてみてください。軽めの発汗が体内にたまっている湿気の排出を促し、毛穴やキメのつまりをとり除いて陽気の通り道をすっきりさせます。

◎「水分代謝を高めるツボ」にお灸をする
体内の余分な水分や老廃物の排出を促す次のツボにお灸をしてみましょう。3つのツボすべてにお灸をしてもよし、気になる不調に応じてツボを選んでお灸をしてもよし。お灸はできれば2日に1回ぐらいのペースで行うのがおすすめで、毎日できるとさらに理想的です。台座灸なら約5分程度で行えます。就寝30分〜1時間前のリラックスタイムに行うのがいいでしょう。

足三里(あしさんり)、陰陵泉(いんりょうせん)、豊隆(ほうりゅう)のツボの位置

陰陵泉(いんりょうせん)
脾の働きを強くして水分代謝を高める代表的なツボです。内くるぶしからすねの骨の際を上に向かってなぞっていくと、ひざの少し下に骨の出っ張りがあって指がぶつかって止まり、その出っ張りの下にあるへこんだ部分にあります。むくみをはじめ、尿の出が悪い、尿もれ、おりもの、吐き気、おなかのはり、下痢などをやわらげるのに役立ちます。

豊隆(ほうりゅう)
体内に長く停滞してドロドロになった水分を排出する効果が高いツボで、顔のむくみ、手足のむくみ、胸やわきの痛み、頭痛、めまい、腹痛など、ドロドロ水分が詰まっていることによって生じる不調をやわらげます。ひざのお皿のすぐ下にある外側のくぼみと、外くるぶしを結んだ線の中間地点にあります。

足三里(あしさんり)
ひざの皿の外側のくぼみから指4本分下、すねの骨の外側の際にあるツボで、脾や胃の働きをよくして水分代謝を高め、湿気がたまりにくい体質作りをサポートします。むくみ、尿の出が悪い、尿もれ、腹痛、おなかのはり、吐き気などの改善を助けます。

◉初伏(7月15日~)=補陽の養生 
初伏がはじまったら本格的に冬病夏治をスタート。補陽の養生を行っていきましょう。
※小暑は7月22日までですが、初伏自体は次の節気の「大暑」に入る7月24日まで続きます。

◎「夏の冷やしすぎ」がないかをチェック
この時期は毛穴や肌のキメが大きく開放されるので、陽気だけでなく冷えも体内に浸透しやすいときです。この時期に体を冷やしすぎると、冷えが体の奥まで到達して芯から冷えてしまう可能性も。まずは次のような「夏の冷やしすぎ」が該当していないかをチェックして、あてはまるものは見直してみましょう。

☑CHECK!
①夏でも冷房で手足が冷えている、薄着で長時間冷房にあたっている
②キンキンに冷えた飲みものやアイスクリーム、かき氷などをよくとる
③湯船につからずシャワーだけですますことが多い

→冷房で体を冷やしすぎないように、首元・手首・足首の“3つの首”を冷房の風から守ることを意識してください。首元はショールなどで、手首は羽織ものなどで、足首は靴下などでカバーして、空調の風が直接あたらないようにするといいでしょう。

②→「暑い夏に冷たいものを控えるなんて無理」と思われるかもしれませんが、夏に冷たい飲食物が欲しくなるのは冷たい刺激に脳が依存している状態であり、体が本当に必要としているわけではありません。冷たい飲食物をとりすぎると、脾の働きが低下して水分代謝が停滞するため、口やのどに水分が行き届きにくくなって「ニセののどの渇き」を感じやすくなり、これを潤そうとさらに冷たい飲みものを飲む……という悪循環に陥ってしまいます。いったん冷たい飲食物を控えてみると、脾の働きが本来の状態に戻って水分代謝も正常になるので、「どうしても冷たいものを口にしたい」という欲求も意外とすんなり消えていくことが多いです。

③→夏でもシャワーだけですませずに、湯船につかりましょう。冷房で冷えた体を湯船で温める意味でも大切です。ただし長風呂をして汗を大量にかくと夏バテを招くので、38~39℃程度のぬるめのお湯に10〜15分ほど、額にじんわり汗をかく程度を目安にしてください。

◎補陽の食材をとる
補陽の性質を持つ食材には、羊肉、鶏肉、えび、くるみなどがあります。これらの食材をこの時期に積極的にとるようにしてみてください。ちなみに韓国では、三伏それぞれの最初の日に参鶏湯(サムゲタン)を食べる習慣があるといいます。参鶏湯は補陽の食材がたっぷり使われた、体をぽかぽかに温める料理。これにならって、初伏の最初の日である7月15日に参鶏湯を食べるのもおすすめです。

◎背中にある「補陽のツボ」にお灸をする
三伏貼や三伏灸を施術している治療院を近くでは見つけられないという人も多いでしょう。そこでぜひ、三伏貼や三伏灸で施術される補陽のツボにセルフでお灸をしてみてください。
代表的なツボは、背中にある次のツボです。背中にはエネルギーの出入り口となるツボが多く集まっているので、体の深奥部にある腎へ陽気を補うのに最適。一度にすべてのツボにお灸をすると体への刺激が強すぎる可能性があるので、気になる不調に応じて1~3種類のツボに絞ってお灸をするのがいいでしょう。できれば末伏が終わるまでの三伏の期間中、週に2〜3回の頻度でお灸を続けるのがおすすめです。毎日行っても問題ありません。

大椎(だいつい)、風門(ふうもん)、肺兪(はいゆ)、脾兪(ひゆ)、腎兪(じんゆ)のツボの位置

①大椎(だいつい)⋯⋯首を前に倒したときに首の後ろで一番出っぱる骨の下のくぼみ。体全体の陽気をつかさどるツボで、冷え、かぜ、頭痛、発熱、首や肩のこりなどの予防に適しています。
②風門(ふうもん)⋯⋯大椎から2つ下の背骨から指2本分外側にあるツボ。左右にあります。かぜによる発熱、せき、鼻水、鼻づまり、発熱、頭痛などを予防するツボです。
③肺兪(はいゆ)⋯⋯大椎から3つ下の背骨から指2本分外側にあるツボ。左右にあります。せき、たん、皮膚のかゆみなどを予防するツボです。
④脾兪(ひゆ)⋯⋯肩甲骨の一番下の角と、骨盤の一番高いところの中間あたりの高さで、背骨から指2本分外側にあるツボ。左右にあります。せき、たん、下痢、腹痛、むくみ、腰の重だるさなどに用いられます。
⑤腎兪(じんゆ)⋯⋯ウエストの一番くびれた位置の背骨から指2本分外側にあるツボ。左右にあります。尿もれ、頻尿、尿の出が悪い、おりもの、腰の冷え、腰やひざのだるさ、腰痛などに用いられます。

背中のツボは自分で探すのが少々大変ですが、押さえたときに軽い圧痛を感じる場所がツボなので、参考にしてみてください。手が届きにくい場合は、火を使わないお灸を使用すると安全です。

最後に注意点として、暑がりの人、のぼせやすい人、イライラしやすい人、寝汗をよくかく人などは体を温めすぎるとよくないので、補陽の食材をとる養生、補陽のツボにお灸をする養生は控えましょう。

夏の暑さは、冬の厳しい寒さを跳ね返す底力となるのが自然の摂理。この時期に開放モードになっている私たち人間の体も、その自然の摂理を求めているといっていいでしょう。冬病夏治という東洋医学の知恵で、暑中の時期でしか得られない自然の恩恵を逃さず体にとり入れていきたいですね。

おわりに

小暑の自然と体とのつながりの話、いかがでしたでしょうか。
「暑い」というのはとかく忌み嫌われがちで、暑い季節の到来というと、ネガティブな話題として扱われることが多いようです。近年は地球温暖化の影響で極端な猛暑日も多いので仕方がない面もあるのですが、しかし実は「暑い季節を過ごすこと」自体には、今回ご紹介した「補陽」という意味以外にも重要なメリットがあるのです。

結論からいうと、暑い季節を過ごすことは細胞レベルでの強力な新陳代謝とデトックスになるのです。

暑中に入り、体内の陽気があふれ出して体表面に浮き上がってくると、その力に先導されて体内の「気(き=エネルギー)」「血(けつ≒血液)」も体表面に集まり、活発に循環しはじめます。ちょうど、真夏の太陽に熱せられた海上に台風や低気圧が発生して、大気が活発にめぐるのと同じような原理ですね。こうして暑い季節になると、気や血のめぐりが1年で最も活発になり、新陳代謝が活性化するのです。
さらに高温環境下では、体温を下げるために大量の汗をかきます。これによって体内の水分が入れ替わり、体の深部にたまっていた老廃物が強力に体外へと排出されてデトックスされるわけです。

暑さとはただストレスになるだけのものではなく、意外なほどに私たちの体に多くの恩恵をもたらしているんですね。

近年の夏の暑さは、危険なレベルであることに間違いはありません。しかし、あまりにも暑さを嫌って排除しすぎてしまうと、結果的に「不自然」な状態となり、慢性的に冷え、代謝が悪く、老廃物がたまりやすい体質になってしまう可能性もあるのです。

自然にはすべて意味があり、「暑い季節」にもやはり意味があるもの。その暑さの恩恵を最も受けられるのが暑中であり、そのはじまりが小暑です。厳しい暑さからは心身を守りつつも、自然の営みである暑さと上手につき合いながら、暑中を過ごしていきたいですね。

参考文献:
国立天文台HP 暦計算室 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/
『鍼灸学[経穴篇]』(天津中医薬大学、学校法人衛生学園 編、東洋学術出版社
『中国伝統医学による食材効能大事典』(山中一男・小池俊治編、東洋学術出版社刊)
『食薬方剤学』(本草薬膳学院刊)

画像素材:
Adobe Stock、Envato、Canva

小暑の七十二候(※)と月の満ち欠けがチェックできるスマホ用・PC用壁紙です。「自然とのつながり」を感じるツールとして、ダウンロードしてご活用ください。

※七十二候(しちじゅうにこう)とは⋯⋯二十四節気の各節気を約5日ずつ、3つに分けた暦で、気象や動植物の生態の変化にもとづいているのが特徴。約2週間のひとつの節気にもさまざまな変化があり、その変化のグラデーションを色鮮やかに伝えてくれる暦です。

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著者プロフィール
TSUBO

国際中医師・国際薬膳師
東洋医学ライター

広島生まれ、東京育ち。2019年より広島県在住。
大学卒業後、雑誌・書籍・WEBコンテンツの編集者をへて、国際薬膳師、国際中医師の資格を取得。現在は「自然と人体のつながり」をテーマに東洋医学ライターとして活動中。

宝島社「大人のおしゃれ手帖WEB」(https://osharetecho.com/writer/50786/)にて「更年期の養生」を連載中。

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