【暦とからだ|立夏】葉脈がみなぎり緑滴る季節、血管がみなぎり皮膚が潤う(スマホ・PC壁紙付)

二十四節気「立夏」のイメージ。若葉が全開になり葉脈が最大限に張りめぐらされている

冬じゅうかけて地中に蓄えられた生命力を糧に、硬い殻を破り、大地を突き抜け、空に向かって芽吹いていった「上昇」の季節、春。そこから季節は二十四節気の「立夏(りっか)」となり、いよいよ「拡大」の季節である夏がはじまります。
ここから自然界はどう変わり、それにともなって私たち人間の体はどう変わっていくのでしょうか。

ここでは東洋医学にもとづいて、立夏の自然と人間の体のつながりを独自の視点で探り、季節と調和して自然との一体感を感じられる養生法をご案内していきます。自然の中に私たちの体を、私たちの体の中に自然を見出してみてください。

<前の節気>穀雨(こくう) 2026年4月20日~5月4日
<次の節気>小満(しょうまん) 2026年5月21日~6月5日

立夏は「緑滴る季節」

二十四節気「立夏」のイメージ。新緑の木立から差し込む木漏れ日
立夏はみずみずしい新緑があふれる季節。緑滴る季節です。

2026年5月5日~5月20日は二十四節気の「立夏(りっか)」。夏のはじまりとなる節気です。日照時間は14時間近くまで長くなり、植物の光合成は一気に加速。緑は濃くなりはじめ、森には酸素が増えて新鮮な空気に満ち、新緑の香りがさわやかな南風に乗って吹き抜けていきます。まさに「風薫る」季節ですね。

立夏の時期にはこの「風薫る」のように、過ごしやすい気候を象徴する言葉が多くあります。

例えば「五月晴れ」。すがすがしく澄み渡った青空から、まぶしい日の光が差し込む様子を表現する言葉です。太陽の力が強くなりはじめる、春から夏への移ろいが想起されます。

「緑滴る(みどりしたたる)」という言葉も、立夏の風景を切り取った表現です。みずみずしく潤った若葉が初夏の日差しを浴びてキラキラと輝き、その翡翠のようなつややかな緑がまるで滴り落ちそうに見える様子を表しています。素敵な表現ですね。

ただ、実はこの言葉、単なる比喩ではないってご存知でしたか?
立夏の緑は滴って見える……のではなく、実際にしずくが滴っているのです。

2026年~2027年の二十四節気表。立夏は5月5日~20日
立夏は夏の最初の節気、初夏のはじまり。紫外線が強くなりはじめる季節でもあります。

【立夏の自然】葉脈が全開、葉先まで水分と栄養がみなぎる

二十四節気「立夏」のイメージ。若葉の葉先から水が滴り落ちる様子
葉脈の末端からしずくがあふれ出す現象は「溢泌(いっぴつ)」と呼ばれます。

立夏の緑からは実際にしずくが滴っている──いったいどういうことなのでしょうか。

春分前後から芽吹きはじめた若葉は、立夏を迎える頃には全開となり、大きく広がった葉が日光をめいっぱい浴びて明るくきらめきます。葉脈も葉のすみずみまで網の目のように張りめぐらされ、その内側では水分や栄養がさかんに流れはじめます。

葉脈を流れる水分は、地下の根から吸い上げられる水分です。地下の土は立春の頃は5℃前後と冷たかったけれど、春を過ごすうちに少しずつ温まっていき、立夏になると15~20℃まで上昇。土の温度が上がるにつれて根の代謝活動も活発化し、水分を吸い上げる力も強くなってきました。さらに直前の節気の「穀雨(こくう)」は雨が多かったため、地中にはその雨水が残留。立夏になった今、植物は地下からたっぷりと水分を吸い上げているのです。

そしてその水は、根から幹の内側の導管を通り、枝先から葉脈を伝って、葉の細胞ひとつひとつにまでしみ渡っていくのです。

葉脈のイメージ
根から吸い上げられた水は、太い葉脈から細い葉脈へ、さらにその先の末端まで送られて、葉の細胞へと届けられます。

もしこれが春先や秋口であれば葉脈中の水分は乾燥にさらされ、真夏であれば暑さによって葉の気孔から多くの水分が蒸発してしまうでしょう。しかし、立夏の時期は湿度が高く平均気温も20℃前後なので夜間から早朝にかけて葉の水分はあまり乾燥も蒸発もせず、葉脈や葉の細胞中にたっぷりと蓄えられます。

まだ初々しい若葉の細胞には弾力があるので、水分をたっぷり蓄えることで風船のようにふくらんだ状態に。水で満タンになっている葉脈もピンと張り上がります。そんな細胞や葉脈の張力によって葉の表面はつやつやと光り、新緑のきらめきをもたらすわけですが、葉先まで満水の状態になってもなお根からは途絶えることなく水分が送られ続け、夜間から早朝になるといよいよ葉脈の末端からあふれ出してきます。

そのあふれた水が、葉先からしずくとなって滴り落ちてゆく──「緑滴る」とはこの、滴り落ちるほどにみなぎっている新緑の生命力の現れなのです。

【立夏の天人合一】葉脈が広がる=血管の働きがさかんな季節

二十四節気「立夏」のイメージ。緑滴る若葉と血管のビジュアル
若葉に張りめぐらされている葉脈は、人間の体内に張りめぐらされている血管によく似ています。

天人合一(てんじんごういつ)───これは、「天(自然界)と人間は一体である」という意味の東洋医学の言葉。自然と人間はつながっていることを説くもので、この天人合一の言葉の通り、立夏の季節に起こる自然の変化と同じような現象が人間の体にも現れます。

春先にはまだ閉じていた若葉も立夏の時期になると大きく広がり、葉脈は最大面積まで張りめぐらされます。「脈」という字がついているだけあって、よくよく見てみると葉脈とはまるで人間の血管のよう。葉のつけ根から太い主脈が伸び、そこから左右に羽根を広げるように側脈が伸び、さらにその先で細脈が張りめぐらされる……まさしく大動脈から動脈、細動脈、そして毛細血管へと張りめぐらされる人間の血管と重なります。

二十四節気「立夏」のイメージ。葉脈の主脈、側脈、細脈
最も太い主脈は「大動脈」、そこから枝分かれする側脈は「動脈」、さらにそこから網の目状に広がる細脈は「細動脈」や「毛細血管」に相当。植物と人体のシンクロニシティです。

自然と人間とのつながりを考えると、葉脈が最大限まで広がって水分が活発に送られてくる立夏は、人間にとっては血管の活動がさかんになる季節、毛細血管のすみずみにまで血液がよくめぐる季節ということができるでしょう。

日差しがどんどん強まっていくなかで、植物は葉脈をめいっぱい広げて葉の細胞のすみずみにまで水分をたっぷりと届けることで、熱によるダメージから葉を守っています。その葉脈から送られた水分をたっぷり蓄えてふくれ上がった葉の細胞は、人間に置き換えると、毛細血管から水分と栄養分をたっぷり受けとって潤いとハリが生まれた皮膚の細胞。人間も植物と同じように、毛細血管から皮膚細胞へと活発に水分を送りつづけることによって、これから強くなる日光の熱や紫外線によるダメージから肌を守ろうとしているのです。

【立夏の東洋医学】心の「血脈をつかさどる」働きが活発に

五臓と季節の関係図。夏は心(しん)の働きがさかんになる
東洋医学では、夏は五臓の「心(しん)」の働きがさかんになるといわれています。

立夏は夏のはじまりの節気です。東洋医学では、夏は「心(しん)」の働きがさかんになると考えられています。
心とは「五臓(ごぞう=体の機能を大きく5つに分けた東洋医学の考え方)」のひとつで、その主な働きは「血脈をつかさどる」というもの。「血脈」とは東洋医学では血の通り道である心臓と血管のことをいい、「血脈をつかさどる」とは

①「血(けつ≒血液)」を生成する
②血流を調整する
③血管の動きをコントロールする

という3つの役割をさしています。

血流の調整と血管のコントロールは「心気(しんき)」の力がになっています。心気とは心のエネルギーのこと。心気が充実していることで心のポンプ機能や血管の血液を送る働きが活発化して、血が体のすみずみにまで行き渡るのです。

また、血管の働きを充実させるためには、その中を流れる血の量も十分でなければいけません。心の働きによって体内をめぐる血は「心血(しんけつ)」と呼ばれ、体じゅうをめぐって体の各器官に栄養と水分を届ける役割をになっています。皮膚細胞に潤いを届けるのも、この心血。

「緑滴る」木々の葉が葉脈を全開にしてすみずみの細胞にまで水分や栄養を届けているように、立夏は血管から細胞へと水分や栄養を届ける力が高まっていく季節。そのためには、血流と血管の働きをコントロールする心気と、血管の中を流れる心血を補うことがカギとなります。血管の働きを高めることで、つややかな新緑のようにみずみずしくてハリのある肌を作ることができるのはもちろんのこと、葉の水分が太陽の熱から木全体を守っているように、血管の働きを高めることは体温調節機能を高めることにもつながり、夏バテ防止にも大きく貢献します。

「夏バテ対策なんて気が早い」と思われるかもしれませんが、暑さに強い体はこの時期から少しずつ作り上げていくもの。二十四節気に合わせて体を調整することは、無理なく着実に自然への適応力を高める近道でもあるのです。

【立夏の養生】「心気」と「心血」を補う食養生&ツボ養生

血管の活動がさかんになる立夏は、血流の調整と血管のコントロールに欠かせない心気と、心の働きによって体内をめぐる心血を補う養生に力を入れていきましょう。心気と心血の補給は五月病予防にも役立ちます。

◉食材
たまご

たまごには心血を補って精神を安定させる性質があります。また、中国では「立夏にたまごを食べると熱中症にならない」ともいわれるのだそう。ぜひ、立夏の期間は毎日たまごを食べるようにしてみてください。特にのどの乾燥、目の充血、寝汗、不眠などが気になる人におすすめです。

・小麦

小麦は「しょうばく」という名の生薬として漢方薬の原料にも用いられている食材。心を強くして精神を安定させる性質に優れており、うつ、不安感、不眠などの改善に役立ちます。
心血を補う食材であるたまごと組み合わせたたまごサンドフレンチトーストカルボナーラパスタ月見うどんなどは、立夏にぴったりの薬膳となります。

・牛乳

牛乳は心気と心血の両方を補う食材で、虚弱体質、疲労、精神的な疲れ、不眠などの改善を助けます。牛乳をたっぷり使うグラタンミルク煮ミルクスープなどのメニューがおすすめです。

・なつめ

心気と心血の両方を補い、心を強くして精神を安定させる性質に優れた食材です。疲労、めまい、精神的な疲れ、精神不安定、不眠などをやわらげます。乾燥なつめはそのままおやつとして食べることもできるほか、薄切りにして100℃のオーブンで30分ほど焼くと甘くてカリカリとした食感のなつめチップスになります。また、乾燥なつめを1~2個ちぎってティーポットに入れ、熱湯を注いで2~3分ほど蒸らすとなつめ茶に。残ったなつめも一緒にいただきましょう。

◉ツボ
・内関(ないかん)

内関(ないかん)のツボ位置図

手首の内側の横しわから指3本分ひじ側にあるツボで、手のひらをグッと握ったときに浮き出てくる2本の筋の間にあります。心気を整えて血流のコントロールを助けます。動悸、胸脇部の痛み、不眠、もの忘れなどが気になるときにも。

・神門(しんもん)

神門(しんもん)のツボ位置図

指で手首のしわを小指側へとなぞるとぶつかる、一番小指側にある骨の手前のくぼみにあるツボ。心気を補い、血流を整える効果が期待できます。精神を安定させて、不眠、もの忘れ、イライラなどをやわらげるツボです。 

◉生活養生
・心の働きを助ける養生としておすすめなのがウォーキングです。歩くことで「第2の心臓」と呼ばれるふくらはぎのポンプ機能が活性化されて血管の収縮と拡張がスムーズになります。軽く汗をかくことで、体内の熱を上手に逃がす養生にもなります。

・緑滴る立夏は、ぜひ森林浴を。光合成がさかんなときなので森林空間は新鮮な空気で満たされています。樹木から放出される香り成分のフィトンチッドにはリラックス作用も。深呼吸をし、紫外線に注意して背中を日光浴すると、心身ともにに活力が湧いて元気になれるでしょう。

新茶を味わいましょう。立春から数えて八十八日目(今年は5月2日)を「八十八夜」といい、新茶の収穫期となります。立夏はその新茶が出回る季節。なかでも八十八夜に摘まれた新茶は、不老長寿の縁起物として昔から珍重されてきました。薬膳的には、緑茶には体内の余分な熱を冷ます性質があるので、初夏の熱気はおいしい新茶でやわらげるのがおすすめです。

おわりに

立夏の自然と体とのつながりの話、いかがでしたでしょうか。
立夏は夏のはじまりの節気。とはいえ、いきなり真夏のように暑くなるわけではありません。生命が芽吹く「上昇」の春から、万物が繁栄する「拡大」の夏へとシフトチェンジする第一歩。それは植物が葉を広げて葉脈をみなぎらせるように、私たち人間も「脈=血流・血管」をみなぎらせることからはじまります。

植物の葉脈と人体の「血脈」。構造はとてもよく似ていますが、ひとつ大きく違う点があります。
それは、植物には心臓がないこと。心臓にあたるポンプ機能がないことです。
植物の体内をめぐる水分や栄養分は、葉から水分が蒸発(蒸散)することで生まれる吸引力や、水分の濃度差による浸透圧などの力で循環しています。その動力源の多くは外気の熱、つまり太陽だといえるでしょう。

一方、人体には心臓があり、そのポンプ機能で血が循環しています。人間の体には太陽にあたる心臓が備わっている、と考えることもできそうですね。太陽の熱が強くなる夏は、人間の体内に息づく太陽=「心(しん)」の勢いも強くなっていく── 体の中に広がる自然と、体の外の自然とが、ピタっと重なるようです。

この記事の最後で配布している壁紙(スマホ・PC用)も活用していただき、自然と体のつながりを少しでも身近に感じるきっかけにしていただけたら幸いです。

参考文献:
国立天文台HP 暦計算室 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/
『鍼灸学[経穴篇]』(天津中医薬大学、学校法人衛生学園 編、東洋学術出版社)
『中国伝統医学による食材効能大事典』(山中一男・小池俊治編、東洋学術出版社刊)
『食薬方剤学』(本草薬膳学院刊)

画像素材:Adobe Stock、Envato、Canva

立夏の七十二候(※)と月の満ち欠けがチェックできるスマホ用・PC用壁紙です。「自然とのつながり」を感じるツールとして、ダウンロードしてご活用ください。

※七十二候(しちじゅうにこう)とは⋯⋯二十四節気の各節気を約5日ずつ、3つに分けた暦で、気象や動植物の生態の変化にもとづいているのが特徴。約2週間のひとつの節気にもさまざまな変化があり、その変化のグラデーションを色鮮やかに伝えてくれる暦です。

※壁紙は個人利用の範囲でお楽しみください。無断転載・再配布はご遠慮ください。

スマホ用壁紙

「東洋医学で自然とつながる」オリジナルの立夏カレンダー壁紙(スマホ用)

※お使いの端末に合わせて、設定時にサイズを調整してください。

PC用壁紙

「東洋医学で自然とつながる」オリジナルの立夏カレンダー壁紙(PC用)
著者プロフィール
TSUBO

国際中医師・国際薬膳師
東洋医学ライター

広島生まれ、東京育ち。2019年より広島県在住。
大学卒業後、雑誌・書籍・WEBコンテンツの編集者をへて、国際薬膳師、国際中医師の資格を取得。現在は「自然と人体のつながり」をテーマに東洋医学ライターとして活動中。

宝島社「大人のおしゃれ手帖WEB」(https://osharetecho.com/writer/50786/)にて「更年期の養生」を連載中。

TSUBOをフォローする
季節と東洋医学
TSUBOをフォローする
タイトルとURLをコピーしました