【大寒(だいかん)の自然と東洋医学】冬から春へといのちをつなぐ「地下水脈」養生法

二十四節気「大寒」のイメージ。冬の熊本・浮島神社

立春からはじまった二十四節気(にじゅうしせっき)も、とうとう最後の節気となりました。
2026年1月20日~2月3日は、1年で最も寒い「大寒(だいかん)」。その最後の日である2月3日は節分となります。
自然界では厳しい寒気がピークを迎えますが、一方で大地の下では春への準備が万端となる時期
暦の上では冬の終わりの節気であり、新たな四季のはじまりへとバトンをつなぐ節目でもある大寒の東洋医学と養生法について、国際中医師・国際薬膳師の筆者がご紹介していきます。

<前の節気>小寒(しょうかん) 2026年1月5日~1月19日

「大寒(だいかん)」は冬の終わり、山が眠りから目覚める直前

大寒のイメージ。雪が積もる冬の「山眠る」イメージ。冬の岩手県、西和賀町、和賀川、,錦秋湖
岩手の冬山の景色。寒気がピークを迎えますが、厳しい冬も終わりに近づきつつあります。

1年で最も寒い「大寒(だいかん)」。その名前の響きからは、厳しい冬の景色が想起されます。
草木は枯れ、地面には枯れ葉や枯れ枝が敷き詰められ、その上に真っ白な雪が厚く降り積もり、吹雪に耐えながら動物たちがひっそりと生きている⋯⋯そんな、極寒の冬山の景色をイメージする人も多いでしょう。

冬の山は、古くから「山眠る」と表現されてきました。植物や動物の動きが限りなく少なくなって静寂に包まれる様子を、昔の人々は「山が眠っている」と感じたのでしょう。そのみずみずしい言語感覚もさることながら、冬山を「眠る」と表すことが植物学的にも東洋医学的にも的を射ていて、先人たちの慧眼には舌を巻かずにいられません。

落葉樹には光をとらえて昼の長さを分単位で知る力があり、秋の終わりには昼が短くなったことを感知して光合成を停止します。そして冬のはじまりである「立冬(りっとう)」の頃には、光合成を終えた葉を落として幹と枝だけになります。

光合成は水と二酸化炭素を原料に、光のエネルギーを使って酸素と栄養を生み出す活動なので、光合成をしている間じゅう木々は大量の水をポンプのように地下から吸い上げていました。しかし光合成を終えて落葉した木々は、水を吸い上げるポンプ活動も休止。すると森に降り注いだ雨は木々に吸い上げられることなく地下に浸透していくため、山が水を蓄えはじめるのです。まるで昼間は水を消費しつづけている人間の体が、夜になり眠りにつくと体内に水分を蓄えはじめるのと同じように。山も眠りにつく、というわけです。

ほどなくして、山には雪が降り積もります。雪は寒い冬の間でもわずかずつ溶けているので、その雪のしずくは森の土壌にしみ込んでいき、土壌中のミネラルや酸素をじわりじわりと溶かしつつ、不純物を浄化しながら、ゆっくりと時間をかけて地下深くまで浸透していきます。

そして冬の終わりが近づく大寒の頃になると、山の地下水脈はこれ以上蓄えられないほどにあふれる寸前の状態。眠っている間に水分をたっぷり蓄えた人間が自然と朝に目を覚ますように、ひと冬かけて清らかで栄養豊かな水をたっぷりと蓄えた山は、もうすぐ目覚めようとしているのです

2025~2026年の二十四節気一覧。24番目の節気「大寒(だいかん)」
大寒は24番目の節気。春夏秋冬のラストを飾ります。

冬に蓄えられた生命力は、春の活力源となる

大寒のイメージ。冬の岩手県、雪が積もる山間を流れる和賀川
冬山の森の地下では、土壌のミネラルと酸素をたっぷり吸収した濁りのない水がたっぷりと蓄えられています。

眠りつづけていた冬山に蓄えられた水は、土壌中から溶け出したミネラルと酸素が寒さによって凝縮された、生命力のエッセンス。これは人間の体に置き換えると、冬の間に五臓の「腎(じん)」に蓄えられる「腎精(じんせい)」そのものです。

腎精とは、五臓のなかで最も体の深い場所にある腎の、そのまた最も深い場所に蓄えられている“生命力の核”。この腎精から体全体の熱源となる「腎陽(じんよう)」と、体全体の水分源となる「腎陰(じんいん)」が生まれます(腎精については「大雪(たいせつ)」の記事でも詳しくふれています)。

冬山が眠っている間に清らかで栄養豊かな水をたっぷりと蓄えていくように、人間の体も冬になると体内に栄養分や水分を蓄えようとする“貯蔵モード”になります。そうして蓄えられたもののうち、生命力が凝縮されたものが腎精。冬の終わりが近づく頃に冬山には地下水が満ちるように、私たちの体も冬の最後の節気である大寒の期間に腎精をめいっぱい蓄えておくことが理想的です。冬山の地下水が春になると地上に湧き出て春の芽吹きの力となるように、冬に体内に蓄えられた腎精は、春から伸びやかに動き出す心と体の活力源となるのです。

大寒の養生法:地下水脈から体内へ、生命力を満たそう

湧き水のイメージ。山に蓄えられた地下水脈から清らかな水が湧き出している
大寒の時期の地下水は、1年で最も清らかでおいしいといわれています。

春は草木が芽吹いて成長し、夏はエネルギーがどんどん生み出され、秋はそのエネルギーが実を結び、冬は眠りについて生命力を蓄える⋯⋯そんな春夏秋冬のリレーのアンカーとなるのが大寒です。四季の締めくくりとなるこの時期は、山に蓄えられた清らかな地下水に触れ、体内にとり入れて、生命力のエッセンスを体に満たす養生をおすすめします。

◉地元の温泉につかりながら腎のツボを押す
地下から湧き出る水といえば温泉。温泉は地下水の生命力に地熱のエネルギーも加わったものです。有名な温泉地へ出かけるのも悪くありませんが、大寒の養生としては自分が生活している土地と同じ水系の温泉につかるのがベストです。
さらに次の腎のツボケアもあわせて行うと効果的です。まず入浴前は、内くるぶしとアキレス腱の間のくぼみにある「太渓(たいけい)」を左右それぞれ1分ほどもみほぐします。そして入浴中は、足裏にある足の指を曲げたときにできるくぼみの「湧泉(ゆうせん)」のツボを左右それぞれ強く押します。入浴後は体を拭いてすぐに、おへその真裏にある「命門(めいもん)」のツボを腹巻きなどで覆い、冷やさないようにしましょう。なお、入浴中は湯気を吸い込むように深呼吸することもおすすめです。

◉神社で手水舎(てみずや)の水や御神水(ごしんすい)などに触れる
多くの神社は、その土地の良質な水が得られる場所に建立されています。そして神社の入口にある手水舎(てみずや/ちょうずや)の水は、その境内の地中深くから汲み上げられた水。まさに、その土地の生命力のエッセンスです。神社でお参りする際は最初に手水舎で手のひらを洗い口をすすぎますが、手を洗う際に手首までしっかり濡らし、すり込むようにして洗ってください。手首の内側にはツボがあるため、地下水のエッセンスを吸収しやすくなります。
なお手水舎には、地下水を汲み上げた「かけ流し式」と、水道水を使った「循環式」とがあります。常に水が注がれていて鉢から水が絶えずあふれ出しているものはかけ流し式である可能性が高いので、かけ流し式の手水舎を選んでお参りするといいでしょう。
また、神社のなかには境内に湧き出る水を「御神水(ごしんすい)」として飲用や持ち帰りを許可している場所もあります。御神水がいただける近隣の神社を探してみるのもいいですね。御神水をいただいた場合はその場でひと口飲み、持ち帰った御神水は翌朝に白湯として飲むのがおすすめです。白湯に天然塩をひとつまみ入れると、腎に届きやすくなります。

◉自分の生活圏と同じ水系のペットボトルの天然水を使う
自分が住んでいる都道府県、あるいは自分の生活圏と同じ水系を水源地とするペットボトルの天然水を購入するのもいいでしょう。その土地の自然なミネラルバランスをとり入れるには、加熱殺菌タイプではなく、非加熱(ろ過のみ)タイプのものがよりよいです。なお、水はこの冬に汲み上げられたものがベスト。多くの場合1.5〜2Lのペットボトルの水は賞味期限が製造日から2年なので、賞味期限が2年後の冬になっているものを選んでください。
ペットボトルの水を飲むときは必ず温かい状態で。白湯黒豆茶くこの実茶などがおすすめです。さらにスープ煮物などの料理にも活用して、生命力のエッセンスをたっぷりといただくのもいいですね。

そしてやはり、腎精を蓄えるために最も大切なのは、少しでも長く睡眠をとること。山が冬じゅう眠りつづけて地下水脈を満たしていったように、冬が終わるまでは早寝遅起きで体の中を生命力で満たして。あふれんばかりの満タンの生命力で、新たな四季のはじまりを迎えていきましょう。

参考文献:国立天文台HP 暦計算室 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/
画像素材:Adobe Stock、Envato

著者プロフィール
TSUBO

国際中医師・国際薬膳師
東洋医学ライター

広島生まれ、東京育ち。2019年より広島県在住。
大学卒業後、雑誌・書籍・WEBコンテンツの編集者をへて、国際薬膳師、国際中医師の資格を取得。現在は「自然と人体のつながり」をテーマに東洋医学ライターとして活動中。

宝島社「大人のおしゃれ手帖WEB」(https://osharetecho.com/writer/50786/)にて「更年期の養生」を連載中。

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