
2026年9月7日~9月22日は、二十四節気(にじゅうしせっき)の「白露(はくろ)」。日中はまだ汗ばむ暑気が残っていても、朝晩はひんやりとした空気に包まれ、草花には小さな露の粒がきらめくようになりました。
しかしそんな朝露のみずみずしさとは裏腹に、空気が本格的に乾燥しはじめるのが白露という季節。皮膚や粘膜の乾燥が気になりはじめるときです。外側からの保湿も大切ですが、最も重要なのは内側からの潤い補給。白露の季節は、ぜひ体の内側からの乾燥対策に力を入れていきましょう。
ここでは東洋医学にもとづいて、白露の自然と人間の体のつながりを独自の視点で探り、季節と調和して自然との一体感を感じられる養生法をご案内していきます。自然の中に私たちの体を、私たちの体の中に自然を見出してみてください。
<前の節気>処暑(しょしょ) 2026年8月23日~9月6日
<次の節気>秋分(しゅうぶん) 2026年9月23日~10月7日
白露は「朝露が白く光る季節」

2026年9月7日~9月22日は、二十四節気の「白露(はくろ)」。日中は暑いものの朝晩は冷え込むようになり、草の葉からしたたる朝露が朝日を反射して白く光ることから「白い露」という名がつけられている節気です。

白露の時期になると、川辺や空き地でススキの穂が銀色に輝く光景を見かけるようになります。風が吹くたびにさらさらと涼しげな音を立てて穂先を揺らし、夕暮れどきには淡い金色に。そして、静かな宵闇に響き渡る虫の声は、長い夜の訪れを知らせています。

【白露の自然】本格的な乾燥に、静かに耐える草木たち

8月後半頃から日本列島上へと流れ込みつつあった移動性高気圧が、9月半ば頃になるとさらに勢力を増して乾燥した空気を多く運んでくるように。そしてこの高気圧に覆われるとすっきりと晴れ渡るため、秋晴れの日が多くなってきます。
秋雨前線や台風の影響で雨の日も多くなるときですが、総じて見ると、大気中の水蒸気量は処暑(しょしょ)の時期よりもさらに低くなり、空気の乾燥が本格化していきます。

すでに植物たちは、処暑の頃から乾燥対策をはじめていました。かすかな空気の乾燥を察知して、葉の表面の空気の出入り口である「気孔(きこう)」という小さな穴を閉じ、水分の蒸発(蒸散)を抑える「気孔閉鎖」を行っていたのです。しかし白露になると空気の乾燥はさらに勢いを増し、気孔閉鎖だけでは水分の消耗を防ぎきれなくなってきました。

それでも草木全体がまだしっかりとみずみずしさを保っていられるのは、根が土壌から水分を吸い上げ、絶えず内側から潤しつづけているから。気孔閉鎖という外側の防御だけでなく、内側からの水分補給も充実しているからこそ、草木は乾いた空気の中でも持ちこたえているのです。
【白露の天人合一】植物が根から水分補給するように、体の内側からの潤い補給がカギ

天人合一(てんじんごういつ)───これは、「天(自然界)と人間は一体である」という意味の東洋医学の言葉。この天人合一の言葉の通り、白露の季節に起こる自然の変化と人間の体には、不思議なつながりがあります。
葉の表面にある気孔は空気の出入り口であり、私たち人間の体に置き換えると口や鼻といった呼吸の出入り口にあたります。植物の気孔閉鎖とはいわば、口や鼻をマスクで覆ってのどや鼻腔などを乾燥から守るのと同じようなもの。しかし白露の時期の乾燥になると、外側の防御だけでは完全とはいえなくなります。
白露の季節は、植物にとって気孔閉鎖に加えて根からの水分補給が充実していることが乾燥対策に不可欠であるように、私たちの人間の体も、内側からの潤い補給をいかに充実させるかが乾燥対策の重要なポイントとなってきます。
【白露の東洋医学】呼吸にともなう肺の「潤いシャワー」が乾燥から体を守る
東洋医学では、皮膚や粘膜へ水分を供給するのは「五臓(ごぞう=体の機能を大きく5つに分けた東洋医学の考え方)」の「肺」の役割であると考えられています。
東洋医学でいう肺の働きとは、単に呼吸をするだけではなく呼吸にともなうさまざまな作用も含まれており、その中核となる働きが、呼吸の吐く力にともなってポンプのようにエネルギーなどを上向き・外向きにめぐらせる「宣発(せんぱつ)」と、呼吸の吸う力にともなってエネルギーなどを下向き・内向きにめぐらせる「粛降(しゅくこう)」。このうち、皮膚や粘膜などの体表面へ水分を届けるのは肺の宣発の力になります。
肺の宣発には、体表面だけでなく全身に水分を散布する働きがあります。これはいわば、体の内側からの「潤いシャワー」といっていいでしょう。

大気が本格的に乾燥しはじめる白露は、外気にさらされている皮膚や粘膜が乾燥しやすい季節。そのため、次のような不調が現れやすくなります。
・からせき
・のどの乾燥、声のかすれ
・鼻や唇の乾燥
・肌のかさつき、つっぱり感
こうした不調には外側からの保湿ケアがよく用いられますが、即効性はあるものの効果の持続性は薄く、一時的には回復してもすぐにまた乾燥が目立ちはじめる⋯⋯ということが起こりがちです。
一方で、空気が乾燥してきても皮膚や粘膜がそこまでひどく乾燥しないという人もいます。こうした乾燥しにくい体質は、肺の「潤いシャワー」の力が高い、ということができます。具体的には肺の宣発の力が高い、体の潤いのもととなる食材をよくとっている、体内の潤いを消耗しにくい生活(夜ふかしをせずよく睡眠をとる、など)を送っている、といった条件を多く満たしている状態です。
いくらのど飴をなめてものどがイガイガする、保湿クリームを塗ってもすぐに皮膚がかさつく、リップクリームを塗っても唇がガサガサする⋯⋯そんな悩みがあるなら、外側からの保湿だけでなく、体の内側からの「潤いシャワー」の力を高める養生にも力を入れてみてください。
【白露の養生】肺を潤す「白い食材」で、体の内側からの保湿ケア
肺は乾燥に弱い特徴があります。肺が乾燥するとその働きが低下し、宣発の力も低下してしまいます。すると当然、「潤いシャワー」の力も低下してしまうことに。つまり、「潤いシャワー」の力を高めるためには肺を潤すことがカギとなるわけです。
東洋医学では、白い色の食材は肺を養う力、特に肺を潤す力があるといわれています。そこで白露の養生では、白い食材を積極的にとり入れることで肺の乾燥を防ぎ、「潤いシャワー」の力を高めていきましょう。この時期におすすめの白い食材と、手軽なレシピをご紹介します。
◉梨

体にこもった余分な熱を冷ましながら、肺を潤す力があるとされる食材。立秋~秋分までの秋の前半、夏の余熱が残る暑い時期に適していて、特にからせきが続くときや、のどが渇いてイガイガするときなどに適しています。おすすめの食べ方は加熱して食べる方法で、生のまま食べる場合は常温に戻してからとってください。冷たい状態だと体を冷やしすぎてしまうので注意しましょう。
【梨のはちみつレンジ蒸し】
<材料(1人分)>
梨……1/2個
はちみつ……大さじ1
<作り方>
梨をひとくち大に切って耐熱皿に並べ、はちみつをまわしかける。ラップをして電子レンジ(600W)で2〜3分加熱すれば完成。
◉白きくらげ

きのこの一種で、白く半透明でコリコリ、プルプルとした食感の食材。中華料理の食材としてよく知られていますが、薬膳では肺や胃を潤す食材として用いられています。からせき、のどの痛み、皮膚のかゆみやかさつきなどが気になるときにおすすめ。ネットで乾燥白きくらげが手軽に手に入ります。
【白きくらげの即席スープ】
<材料(1人分)>
乾燥白きくらげ……ひとつまみ
インスタント味噌汁またはスープの素…1食分
熱湯……150ml
<作り方>
カップに味噌汁またはスープの素を入れ、乾燥白きくらげを加えて熱湯を注ぐだけ。戻し時間も不要で、そのまま具として食べられます。
◉白ごま

肺を潤す働きに加えて、腸を潤す働きもある食材です。からせきのほか、皮膚の乾燥、乾燥からくる便秘が気になるときにも適しています
【白ごまだれごはん】
<材料(1人分)>
すりごま……大さじ1
しょうゆ…小さじ1
みりん…小さじ1/2
ごま油…少々
温かいごはん……お茶碗1杯
<作り方>
小皿にすりごま・しょうゆ・みりん・ごま油を入れてよく混ぜ、タレを作る。温かいごはんにかければ完成。
◉豆腐

体の余分な熱を冷ましながら肺や胃を潤す食材で、ほてりをともなうせきやのどの痛み、のどの渇き、皮膚のかゆみなどが気になるときにおすすめです。
【温やっこの白ごまがけ】
<材料(1人分)>
豆腐……半丁
すりごま……大さじ1
しょうゆ……適量
<作り方>
豆腐を耐熱皿にのせ、ラップをして電子レンジ(600W)で1〜2分温める。水気を軽くきり、すりごまとしょうゆをかければ完成。
◉松の実

肺を潤す働きに優れている食材で、少量でも満足感が得られるのが特徴です。からせきや慢性的なせき、乾燥からくる便秘が気になるときに適しています。
【松の実のきなこあえ】
<材料(1人分)>
松の実……大さじ2
はちみつ……小さじ1
きなこ……小さじ1
<作り方>
フライパンに松の実を入れ、弱火で香ばしい香りが立つまで乾煎りする。火を止めてはちみつを加えて絡め、食べやすい大きさに小分けにする。熱が冷めたらきなこをまぶす。保存容器に入れておけば、つまみやすいおやつになる。
これらの白い食材は、たくさん食べる必要はありません。日々の食事に少しずつ、意識して加えてみてください。なお、処暑の記事で紹介した「皮膚や粘膜の収斂作用を高める6つの養生法」もあわせて行うとさらに効果的です。
また、体の潤いは夜の睡眠中に体内で生成されます。日付が変わる前に就寝する、できれば23時頃には就寝してしっかり睡眠をとることも忘れないでください。
参考文献:
国立天文台HP 暦計算室 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/
『中国伝統医学による食材効能大事典』(山中一男・小池俊治編、東洋学術出版社刊)
『食薬方剤学』(本草薬膳学院刊)
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