【2026年|啓蟄の東洋医学】こり・イライラ・頭痛を手放す!気を滞らせる「古い殻」をときほぐす養生法(スマホ壁紙付)

二十四節気「啓蟄(けいちつ)」のイメージ。アンズ(杏)の木のつぼみがふくらみ、開花が近づいている

暖かい日が増えてきましたね。いよいよ春の足音が感じられる季節となってきました。
2026年3月5日〜3月19日は、二十四節気(にじゅうしせっき)の3番目の節気「啓蟄(けいちつ)」。冬ごもりしていた地中の虫たちがはい出してくる季節です。私たちもそんな自然の生物たちをお手本に、体を覆う「古い殻」を脱ぎ捨て、こり・イライラ・頭痛などの春の不調を手放して、心身を伸びやかに開放していきましょう。

<前の節気>雨水(うすい) 2026年2月19日~3月4日
<次の節気>春分(しゅんぶん) 2026年3月20日~4月4日

啓蟄は「冬ごもりしていた生物が顔を出す季節」

二十四節気「啓蟄(けいちつ)」のイメージ。つくしが地面から顔を出しはじめている
土の中から小さな生物がはい出してくる啓蟄。つくしも地面から顔を出しはじめます。

日が伸びて、大地がだんだんと温まってきました。
土の温度は約10℃。穴ぐらがぽかぽかしてくるのか、冬ごもりの虫たちが陽気につられて地中からはい出てきます。

2026年3月5日〜3月19日は、二十四節気(にじゅうしせっき)の3番目の節気「啓蟄(けいちつ)」

啓は「開く」、蟄は「土の中で冬ごもりしている虫」という意味で、アリ、テントウムシ、ヘビ、カエルなどの虫が冬の眠りから目覚め、戸を開くように地中から顔をのぞかせる季節を表しています。二十四節気が生まれた古代中国では昆虫類だけでなく、小さな爬虫類や両生類も「虫」と呼ばれていました。

2026~2027年の二十四節気表。3番目の節気の啓蟄(けいちつ)
春の3番目の節気、啓蟄。生きものたちの活動がだんだんとにぎやかになってきます。
二十四節気「啓蟄(けいちつ)」のイメージ。冬枯れの草むらのかげから顔を出しているニホンアマガエル
冬枯れの草むらのかげから顔を出している、ニホンアマガエル。体を枯れ草色に変色させてカモフラージュしています。

啓蟄の時期に顔を出すのは、冬ごもりの虫だけではありません。
「立春(りっしゅん)」の頃からは冬山の地下水脈よりあふれ出てきた湧き水を、「雨水(うすい)」の頃からは加えて雪どけ水も、猛烈な勢いで吸収しつづけてきた森の木々。啓蟄を過ぎる頃には、幹がわずかにふくらむほど木の細胞内がはちきれんばかりに水で満たされた状態となり、その水圧が枝先まで及んで、つぼみを覆う硬い殻を突き破ろうとしていきます。 

桃のつぼみ。地下水や雪どけ水をめいっぱい吸収した樹木は、風船のようにふくらんだ状態。その内圧でつぼみもふくらみ、周りを覆う硬い殻がほころんでいきます。

啓蟄とはこのように、小さな生物たちも植物たちも、冬の間に固く閉ざしていた戸を開いて顔を出し、外へ飛び出そうとする季節。植物では身近なところだと、桜、桃、木蓮、こぶし、ねこやなぎ、あんずなどが、啓蟄の時期につぼみをふくらませていきます。
古い殻を脱ぎ捨てて新しい生活をはじめようとする生物たちの、いきいきとした姿を目に焼きつけたいですね。

寒さから身を守っていた「古い殻」を脱ぎ捨てる

二十四節気「啓蟄(けいちつ)」のイメージ。ソメイヨシノのつぼみが緑色にふくらんできている
啓蟄の頃のソメイヨシノのつぼみ。冬につぼみを覆っていた硬いうろこ状の「芽鱗(がりん)」がゆるみ、なかから鮮やかな緑色の芽がふくらんできます。

木々は冬の間、花びらやおしべ・めしべを寒さや乾燥、風雨、鳥や虫の食害などから守るために、硬い殻(芽鱗=がりん)でつぼみを覆っていました。
そして春になった今、美しい花を咲かせるために、その古い殻を解きほぐそうとしています。

立春の頃のソメイヨシノのつぼみ。芽鱗(がりん)に覆われている
2月中旬頃のソメイヨシノのつぼみ(広島)。まだ硬い芽鱗に覆われています。撮影:TSUBO

私たち人間も、寒い冬を過ごす際に体表部の筋肉を硬く収縮させていました。寒さから身を守り、体内のエネルギーが漏れ出ないよう密閉するために必要な「殻」だったわけですが、こうした筋肉の収縮は肩こり、腰痛、関節痛などの原因となるほか、気(エネルギー)のめぐりが滞りやすくなることから頭痛、のぼせ、ほてり、耳鳴り、不眠などを、水分のめぐりも滞りがちになるのでむくみ、冷え、肌荒れなどを、内臓の働きも低下しやすくなるので食欲不振便秘などを招く一因にもなり得るものでした。実際に冬の間、こうした不調に悩まされていた人は多いのではないでしょうか。

冬が終わって春となり、啓蟄を迎えた今は、この硬く収縮した筋肉をやわらかくほぐすとき。冬ごもりの生物たちが古い殻を脱ぎ捨てて外へと飛び出すのと同様に、体に残った硬い殻をゆるめて、エネルギーを伸び伸びと体の外へと発散するときなのです。

空に向かって伸びる木のように、エネルギーを貫通させよう

二十四節気「啓蟄(けいちつ)」のイメージ。大地にしっかりと根を下ろした木が空に向かって真っすぐ伸びている
春は五行(ごぎょう)の「木」に分類される季節。木のように伸び伸びとエネルギーを上昇させるのが理想的な季節です。

ではその「古い殻」、筋肉の収縮は体のどこにあるのかというと、「肝経(かんけい)」と呼ばれる気の通り道にあるということができます。

東洋医学では、春になると五臓「肝(かん)」の働きがさかんになると考えられています。肝には体内の気を下から上へ、内側から外側へとめぐらせる「疏泄(そせつ)」という働きがあるのですが、この疏泄による気の流れの主な通り道が、肝から伸びている「肝経(かんけい)」と呼ばれる通路。足の親指→脚の内側→陰部→下腹部→肝→わき腹→のど→目→頭頂部と、足元から頭のてっぺんまで全身を貫くように上昇して走行しています。

肝経の走行部位の概略図。大地から空に向かって伸びる木のように、足元から頭頂までを貫くように上昇して走行している
足元から頭頂へと上昇する肝経の働きと、大地の水分や養分を猛烈な勢いで吸収する樹木の姿は、どこか似ています。

この肝経の働き、大地に根を張る木が地中の水分や養分を吸収して、梢の先まで吸い上げてゆくさまに重なると思いませんか?

肝は五行(ごぎょう)の「木」に分類される臓。そしてその肝を通る肝経は、まさに体の中に生えている1本の木のようです。(五行については、雨水の記事で詳しく書いています)

しかしこの肝経が走行する部位やその周辺の筋肉が収縮していると、気の上昇が滞ってしまいます。すると、上昇しようとする強い力が出口を失ってしまい、熱がたまり、爆発しそうな状態に。この爆発しそうな状態が、イライラ、怒りっぽい、のぼせ・ほてり、頭痛、目の充血、不眠などの春によく見られる不調の一因となるのです。

啓蟄はこうした筋肉の収縮をゆるめ、ときほぐし、足元から頭頂部までエネルギーが貫通して体が開放されるような養生を行うとき。空に向かって伸びる木になるイメージで、春特有の不調を予防していきましょう。

啓蟄の養生:肝経のツボ押し・マッサージ・ストレッチ

啓蟄におすすめの養生法は、体の中に生えている1本の木=肝経を締めつける「古い殻」をとり除き、気の流れをスムーズにして、足先から頭頂までの疏泄を貫通させること。肝経のツボ押し、マッサージ、ストレッチで硬くなっている筋肉をほぐし、気のめぐりを促していきましょう。

①「大衝(たいしょう)」のツボ押しで上昇スイッチを入れる

大衝(たいしょう)のツボの位置

「大衝(たいしょう)」は足の親指と人差し指の骨が交わる手前にあるくぼみ。両手の親指を重ねて置き、痛気持ちいい強さでじっくりと3秒押し、ゆっくり離します。これを左右5回ずつ行いましょう。
大衝のツボは肝経のツボのなかでも「原穴(げんけつ)」と呼ばれる重要なツボ。いわば体の中に生えている木の「根っこ」といえる場所です。ここを押すことで体の根っこに活力が生まれ、気と血のめぐりが促されて、疏泄の上昇スイッチが入ります。

②気の上昇を促す脚の肝経マッサージ

脚の内側の肝経走行部に沿ったマッサージの説明図

下半身の気のめぐりは滞りやすく、脚の内側を走る肝経のめぐりが悪くなると脚のむくみなどにつながります。両手のひらで内くるぶしのあたりを包み込み、脚の内側の骨のキワに沿って、ひざ、足のつけ根(そけい部)に向かって、一定の圧をかけながらゆっくりとさすり上げましょう。

③疏泄を頭頂部までつなぐ肝経ストレッチ

わき腹から首筋にかけての肝経ストレッチの説明図

最後に、胴体から首、頭頂部までを一本の線でつなぎましょう。特にわき腹と首筋は筋肉が収縮してこりやすく、最も気が滞りやすい場所なので、ストレッチでていねいに解きほぐしていきましょう。
両手を組んで手のひらを返し、頭上高くに突き上げます。息を大きく吐きながら、ゆっくりと体を左右のどちらかに倒してわき腹を心地よく伸ばします。さらに頭を体を倒した側へとゆっくり傾け、首筋を伸ばしていきます。
伸びている側の「わき腹から首筋まで」が、一本のしなやかな木のように長く伸びているのを感じながら、3回深呼吸。反対側も同様に行います。

足元のツボで根元の上昇力を高め、脚をマッサージして幹の通り道を広げ、最後にわき腹から首筋までを伸ばして梢までエネルギーを貫通させる。そんなふうに体が木になったような、心身ともにのびのびとやわらかくなるイメージで養生を行ってみてください。

啓蟄の七十二候養生:エネルギーの貫通を促す食養生

啓蟄の食養生について、啓蟄の期間を初候、次候、末候の3つの期間に分けた「七十二候(しちじゅうにこう)」に沿ってご紹介していきましょう。

七十二候とは、二十四節気の各節気を約5日ずつ初候、次候、末候に分けた暦で、気象や動植物の生態の変化にもとづいているのが特徴。啓蟄という約2週間の短い期間の間にも季節の変化があり、その美しい変化のグラデーションを高解像度で教えてくれるのが七十二候です。

啓蟄の初候、次候、末候は次のようになっています。養生法とあわせてチェックしてください。

◉3月5日~3月9日⋯⋯【初候】蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)
冬ごもりの虫が地上にはい出る季節です。

手足の冷えをとり、気の流れを上向き・外向きにめぐらせるねぎしょうがをよくとって疏泄のスイッチを入れましょう。味噌汁やスープなどの具材として、香りも楽しみながらいただくのがおすすめです。

◉3月10日~3月14日⋯⋯【次候】桃始笑(ももはじめてさく)
桃の花が咲きはじめる季節です。

肝に熱がたまりやすいとき。肝に余分な熱がたまると疏泄の力が低下してしまうので、肝の熱を冷まし、胃腸の気のめぐりをよくして消化を助ける春菊をとりましょう。便通をよくする性質もあります。サッとゆでておひたしにしていただきましょう。

◉3月15日~3月19日⋯⋯【末候】菜虫化蝶(なむしちょうとなる)
青虫が羽化して蝶になる季節です。

上昇した気が頭部に滞ると、ほてり、のぼせ、目の充血、頭痛などにつながりやすくなります。目や頭部の熱感を冷ましてほてりやのぼせなどを整えるセロリをとるといいでしょう。香りの強いセロリの葉もぜひ活用して。炒め物などの具にとり入れてみてください。

参考文献:
国立天文台HP 暦計算室 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/
『鍼灸学[経穴篇]』(天津中医薬大学、学校法人衛生学園 編、東洋学術出版社)
『中国伝統医学による食材効能大事典』(山中一男・小池俊治編、東洋学術出版社刊)
『食薬方剤学』(本草薬膳学院刊)


画像素材:Adobe Stock、Envato、Canva

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著者プロフィール
TSUBO

国際中医師・国際薬膳師
東洋医学ライター

広島生まれ、東京育ち。2019年より広島県在住。
大学卒業後、雑誌・書籍・WEBコンテンツの編集者をへて、国際薬膳師、国際中医師の資格を取得。現在は「自然と人体のつながり」をテーマに東洋医学ライターとして活動中。

宝島社「大人のおしゃれ手帖WEB」(https://osharetecho.com/writer/50786/)にて「更年期の養生」を連載中。

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