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【暦とからだ|処暑】かすかな涼しさは「乾燥」のサイン。肌や粘膜を守る「体表引き締め養生」を

二十四節気「処暑(しょしょ)」のイメージ。黄緑色に色づきはじめた稲穂

2026年8月23日~9月6日は、二十四節気(にじゅうしせっき)の「処暑(しょしょ)」。蒸し風呂のように肌にべっとりとこびりついていた空気が、暑いながらもわずかにからっと感じられるようになりました。
しかし蒸した空気が去ったということは、乾燥の季節のはじまりでもあるということ。木々の葉が表面を引き締めて水分の放出を抑えはじめるこの季節、私たちも体表面を引き締める養生をはじめて皮膚や粘膜の乾燥を予防していきましょう。

ここでは東洋医学にもとづいて、処暑の自然と人間の体のつながりを独自の視点で探り、季節と調和して自然との一体感を感じられる養生法をご案内していきます。自然の中に私たちの体を、私たちの体の中に自然を見出してみてください。

<前の節気>立秋(りっしゅう) 2026年8月7日~8月22日

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処暑は「暑さが落ち着く季節」

二十四節気「処暑(しょしょ)」のイメージ。黄緑色に色づいた田んぼの稲。
田んぼの稲が黄緑色に。空には秋によく見られるすじ雲(巻雲=けんうん)が浮かんでいます。

2026年8月23日~9月6日は二十四節気の「処暑(しょしょ)」。「処」という字には「落ち着く」という意味があり、処暑という節気名は「暑さが落ち着く季節」を表しています。まだまだ気温が高いとはいえ、ジメジメとした湿気はかなり薄れ、空気が時折さわやかになるのを感じられるようになりました。

2026年~2027年の二十四節気表。2026年の処暑は8月23日~9月6日。
秋の2番目の節気、処暑。立秋以降の季節の挨拶である「残暑見舞い」は、処暑までに送るのがならわしです。

処暑の時期の日の長さは13時間15分前後で、最も昼が長かった夏至(6月21日)から1時間以上も日が短くなってきました。こうした日射量の変化を植物は敏感に感知するもので、この時期になると短日植物(たんじつしょくぶつ=日が短くなると花が咲く植物)であるハギキキョウなどが咲きはじめます。美しい花々の色が、私たちに秋の訪れを告げているようです。

二十四節気「処暑(しょしょ)」のイメージ。秋の七草、ハギの花。
秋の七草のひとつであるハギ。ピンクや赤紫、白などの花を咲かせます。
二十四節気「処暑(しょしょ)」のイメージ。秋の七草、キキョウの花。
こちらも秋の七草のひとつであるキキョウ。星形の五角形の花が特徴です。

またこの時期になると、夏の間は青かった稲が黄緑色に色づきはじめ、穂先の籾(もみ)がふくらんでその重みで少しずつ垂れ下がってきます。「実るほど頭を垂れる稲穂かな」ですね。稲は穂が出てから約40~45日後が稲刈りの時期。そのときまで籾にはエネルギー(デンプン)が蓄えつづけられます。

二十四節気「処暑(しょしょ)」のイメージ。黄緑色に色づきはじめた田んぼの稲穂。
処暑となり、少しずつ色づきはじめた田んぼの稲。本格的な「実り」の季節を迎えました。

【処暑の自然】「乾燥」を察知した植物が葉の「気孔」を閉じる

二十四節気「処暑(しょしょ)」のイメージ。初秋の公園の木々。
処暑の頃になると、植物は空気の乾燥を察知して、乾燥から身を守るべく反応をしはじめます。

夏の日本列島は、南の海上で発達する太平洋高気圧に広く覆われます。この高気圧は海から蒸発した大量の水蒸気を含むため、高温多湿の蒸し暑い空気を列島上にもたらしていました。
しかし処暑の頃になると太平洋高気圧の勢力が弱まり、南へ後退しはじめます。すると入れ替わりに、ユーラシア大陸方面から乾燥した移動性高気圧が列島上空へと流れ込んでくるようになり、その影響で大気中の水蒸気量が減少。植物たちはこのわずかな変化から「乾燥の季節」の到来を察知し、乾燥から身を守ろうと反応しはじめます。そのひとつが「気孔閉鎖(きこうへいさ)」です。

植物の葉の表面には、「気孔(きこう)」と呼ばれる無数の小さな穴が開いています。気孔には光合成に必要な二酸化炭素をとり込んで酸素を放出する働きがあるほか、水分を蒸散(放出)する役割もあります。

葉の裏側に分布している気孔の図。二酸化炭素(CO2)を吸収し、酸素(O2)と水(H2O)を放出している。
気孔とは葉の裏側に多く存在している、葉の開口部。二酸化炭素と酸素のガス交換が行われるほか、水分が蒸散される出口でもあります。

1年のうち日射量と気温がピークに達する夏至(げし=6月21日~7月6日)大暑(たいしょ=7月23日~8月6日)の時期は、気孔が大きく開き、水分を盛んに蒸散させていました。水分を蒸散することで熱も発散し、強い日差しによって葉が熱くなりすぎるのを防いでいたのです。

しかし立秋を過ぎて処暑となり、空気の乾燥を感知すると、植物は水分を過剰に放出しないように開いていた気孔を閉じていきます。これが気孔閉鎖であり、以降どんどん厳しくなる乾燥の季節を乗り切るために、いち早く葉の表面を引き締めて水分の消耗を防いでいくのです。

気孔閉鎖の説明図。夏至~大暑は気孔から水分が気化熱を吸収して大気中へと放出。しかし処暑になり空気が乾燥してくると、気孔を閉じて水分の放出を抑える
日射量と気温がピークに達する夏至~大暑の時期は、熱を吸収した水分(気化熱)が気孔から大気中へと蒸散されることで、葉の過剰な温度上昇を防いでいます。しかし処暑になって日射量が低下し、空気が乾燥してくると、植物は気孔を閉じて水分の放出を抑えるようになります。

【処暑の天人合一】「涼しい」と感じることは「乾燥」を察知しているということ

二十四節気「処暑(しょしょ)」のイメージ。すじ雲(巻雲)が浮かぶ秋の空を背景に、空気が乾燥しはじめているのを感じている女性のシルエット
私たちの体の中にも自然が広がっている……この考え方を東洋医学では「天人合一(てんじんごういつ)」と呼びます。

天人合一(てんじんごういつ)───これは、「天(自然界)と人間は一体である」という意味の東洋医学の言葉。この天人合一の言葉の通り、処暑の季節に起こる自然の変化と人間の体には、不思議なつながりがあります。

小暑(しょうしょ)大暑立秋までの時期は大気中の水蒸気量が多く、蒸し暑い季節でした。汗をかいても湿度が高いために蒸発しにくく、熱も放出されにくいため、体に熱がこもりやすい状態だったのです。しかし処暑になると大気中の水蒸気量が減少し、汗が蒸発しやすくなって体内の熱も発散されやすくなるため、気温そのものは高いままでも「からっとしてきた」「涼しい」と感じるようになります。少しずつ、過ごしやすい気候へと移ろいつつあるわけです。

しかしこれは裏を返すと、体内の水分が放出されやすくなったということ。処暑は「乾燥の季節のはじまり」でもあるのです。例えばこの時期から、次のような不調が見られることも多くなります。

・洗顔後や入浴後などに、かすかな肌のつっぱり感や一時的なかゆみを感じる
・起床時に口の中がねばついたり、のどがわずかにイガイガしたり、鼻の奥が乾いてムズムズする
・唇の乾きを感じる
・汗が引いた直後に肌の乾燥を感じる

植物が葉の表面にわずかな乾燥を感じはじめるように、私たち人間にもこうしたわずかな皮膚や粘膜の乾燥症状が現れるようになります。ここで「大したことない、ささいな乾燥だから」と見過ごしてしまうと、本格的な乾燥の季節となる寒露(かんろ=10月8日)以降に次のような強い乾燥症状へと悪化する可能性があるのです。

・皮膚の強いかゆみ、粉ふき、ひび割れ
・慢性的なからせき、声のかすれ
・乾燥性のコロコロ便
・ウイルスや細菌感染に対する免疫力の低下

自然界で植物が気孔閉鎖をしはじめたように、私たちもこのタイミングで体表面を引き締めて皮膚や粘膜から水分が逃げないように養生することが、秋の後半に多くなる深刻な乾燥症状を防ぐ重要な基盤となるのです。

【処暑の東洋医学】体表面のエネルギー「衛気」を活性化させて皮膚や粘膜を引き締める

植物の気孔閉鎖と同じように、人間の体もまた乾燥を感知すると、皮膚や粘膜などの体表面を収縮させて水分の放出を防ごうとします。この体表面の収縮を「収斂(しゅうれん)」と呼びます。

体表面を収斂する力となるのは、「衛気(えき)」と呼ばれるエネルギーです。衛気とは主に皮膚や粘膜などの体表面をめぐるエネルギーのことで、毛穴の開閉や発汗をコントロールするほか、体表を保護して病原菌や有害物質の侵入を防ぐバリアの働き(免疫機能)や、体温をコントロールする働きなどもあります。そして衛気による体表面の収斂作用が高まると、毛穴を引き締めて水分の発散を抑えるほか、免疫機能を高めて病原菌などの侵入を防ぐ体温の低下を防止するなどの働きが強くなります。処暑以降は、衛気の収斂作用がもたらすこの3つの働きによって、体を秋の気候へと適応させていくときとなります。

衛気(えき)による収斂(しゅうれん)作用の説明図
皮膚や粘膜の表面に流れるエネルギー「衛気」は、体表面を覆う「バリア」のような存在。衛気による収斂作用が高まると、体表面が引き締まり、バリアがより強固になってこのような3つの働きが強くなります。

衛気を体表面へと押し出してめぐらせるのは、「五臓(ごぞう=体の機能を大きく5つに分けた東洋医学の考え方)」「肺」の働きです。東洋医学でいう肺の働きとは、単に呼吸をするだけではなく呼吸にともなうさまざまな作用も含まれており、その中核となる働きが、呼吸の「吐く力」にともなってポンプのようにエネルギーなどを上向き・外向きにめぐらせる「宣発(せんぱつ)」と、呼吸の「吸う力」にともなってエネルギーなどを下向き・内向きにめぐらせる「粛降(しゅくこう)」。このうち衛気を体表面へとめぐらせるのは、肺の宣発の力になります。

肺の宣発(せんぱつ)によって衛気がたいっ表面をめぐる仕組みの説明図
「吐く息の力」=「上向き・外向きの力」=宣発によって、衛気は肺から体表へと押し出され、絶えず皮膚や粘膜の表面をめぐり続けています。

つまり、収斂作用を高めるには衛気をめぐらせる肺の力を高めること、そして衛気の材料となる食材をよくとることが必要になるというわけです。

また、皮膚に適度な刺激を与えることも、収斂作用を高める助けとなります。処暑の気候はわずかに乾燥がはじまった状態であり、まだ本格的に乾燥が進んではいないため、衛気が十分に反応しきれていない可能性があります。その場合、皮膚に適度な刺激を与えると衛気の働きが活発化して体表面のすみずみにまでよくめぐるようになり、肺の宣発作用による衛気の供給もスムーズになります。

【処暑の養生】皮膚や粘膜の収斂作用を高める6つの養生法

二十四節気「処暑(しょしょ)」の養生に最適なざくろの果実
ざくろには衛気の働きを高め、乾燥から体表面を守る働きがあると考えられています。

処暑の時期は、体表面の収斂作用を高めて乾燥を予防するために

・肺の力を高める
・衛気の材料となる食材をよくとる
・皮膚に適度な刺激を与える

この3点を意識した養生を行うことがおすすめです。ぜひ、次の養生法をとり入れてみてください。

①「吐く息」を意識した深呼吸
衛気を体表面にめぐらせる肺の宣発の力は、「吐く息」によって生まれます。そのため宣発の力を高めるには「吐く息」を意識した深呼吸が効果的。朝起きたときに、窓を開けて新鮮な空気を吸収しながら「吐く息」を意識して深呼吸してみましょう。
肩の力を抜き、お腹をへこませながら、口からゆっくりと細く長く息を吐き切ります。その後、鼻から自然に新鮮な空気を吸い込みます。これを数回繰り返すだけで肺の働きが活性化し、衛気が体のすみずみまでめぐりやすくなります。

②外気浴
処暑の時期の朝夕に吹く涼しい風に、数分間だけ手や脚などの肌をさらす方法です。
生理学において、皮膚が外気温の低下を感知すると、交感神経の働きによって立毛筋(りつもうきん=皮膚の毛穴一つひとつに付着する毛穴を支える筋肉)や皮膚の毛細血管が収縮して毛穴が閉じます。東洋医学の観点では、秋の涼気という自然界の気候変化に皮膚を直接触れさせることで、衛気の働きを活性化して収斂作用を高めることにつながります。外気浴をしながら①の深呼吸をあわせて行うと、より効果的でしょう。汗をかいている場合は必ず拭き取り、肌が乾いた状態で行ってください。また、おなかは冷やさないように注意してください。

③衛気の材料となる「補気類」をよくとる
衛気とは「気(き=エネルギー)」の一種で、補気の材料となるのは「補気類(ほきるい)」と呼ばれる気を補う性質を持つ食材です。米類、いも類、きのこ類が代表的ですが、特におすすめなのがもち米。もち米には体表面の衛気の働きを高めて毛穴の緩みを引き締め、無駄な汗(水分の漏出)を防ぐ薬膳的な性質があります。普段の白米に1~2割ほどもち米を混ぜて通常通りに炊飯して食べると、暑さで疲れている胃腸にも負担なく摂取することができます。

④ざくろをとる
レモンや梅干しなどの酸味の食材には収斂作用を高める性質があるので、この時期によくとると効果的です。なかでも特におすすめなのがざくろ。ざくろは収斂作用を高める性質にすぐれるうえ、体内に潤い(水分)を生み出して乾燥を防ぐ働きも期待できます。生のざくろが手に入らない場合は、無添加の100%ざくろジュースを白湯で割って飲むといいでしょう。ざくろジュースと白湯を1:1~2ぐらいの割合で割るのが目安です。

⑤シルクのタオルで肌をなでる
昔から体表面の衛気の働きを高める目的で行われていた、乾布摩擦。この乾布摩擦を、皮膚にやさしいなめらかなシルクや肌触りのいいコットンのタオルを使って行うといいでしょう。入浴前や着替えのタイミングで、腕や脚、お腹や背中などを「皮膚がほんのり温かくなったかな」と感じる程度までやさしくなでます。ただし顔は避けて、体もゴシゴシと強くこすりすぎないように注意しましょう。乾いた布で乾いた皮膚をなでることで体表に微小な熱が生まれ、衛気を活性化させることができます。

⑥顔の衛気は手のひらで育てる
顔の衛気を活性化させたい場合は、布でこする物理的な刺激は強すぎます。代わりに両手をこすり合わせて少し温め、その手のひらで顔全体をやさしく包み込んでハンドプレスするといいでしょう。手のひらのおだやかな温もりを伝えるだけで顔の衛気は十分に目覚めることができ、収斂による引き締め効果を得ることができます。

なお、この時期はまだ暑い季節なので、汗をかきすぎないことも重要なポイントです。汗をかきすぎると体内の潤いを消耗し、体が乾燥しやすくなるので注意しましょう。

おわりに

処暑の自然と体とのつながりの話、いかがでしたでしょうか。

皮膚がカサつく、かゆみが生じるなどの乾燥症状が現れた時点で、体表面の水分がある程度失われているものです。そうした症状が現れる前、体表面の水分がまだ保たれているこの時期に体表面を引き締めることで、乾燥が厳しくなる晩秋から冬にかけてすこやかな肌を保ちやすくなるでしょう。
保湿による乾燥防止も効果的ではありますが、まずはなにより、人間が本来持っている体のバリアを強化していくことが、乾燥に強い体を作る土台になるはずです。葉の表面を引き締めていく自然界の樹木と歩みをそろえて、皮膚や粘膜の収斂を意識してみてください。

参考文献:
国立天文台HP 暦計算室 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/
『中国伝統医学による食材効能大事典』(山中一男・小池俊治編、東洋学術出版社刊)
『食薬方剤学』(本草薬膳学院刊)

画像素材:
Adobe Stock、Envato、
Canva

著者プロフィール
TSUBO

国際中医師・国際薬膳師
東洋医学ライター

広島生まれ、東京育ち。2019年より広島県在住。
大学卒業後、雑誌・書籍・WEBコンテンツの編集者をへて、国際薬膳師、国際中医師の資格を取得。現在は「自然と人体のつながり」をテーマに東洋医学ライターとして活動中。

宝島社「大人のおしゃれ手帖WEB」(https://osharetecho.com/writer/50786/)にて「更年期の養生」を連載中。

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