【暦とからだ|穀雨】緑が生い茂る季節、体内の「血(けつ)」を増やす絶好のとき(スマホ・PC壁紙付)

二十四節気「穀雨(こくう)」のイメージ。雨粒に濡れる新緑

2026年4月20日~5月4日は、二十四節気の「穀雨(こくう)」。「穀物を育む雨が降る」という名の通り、田畑を潤すありがたい雨が降る季節となります。新緑が勢いよく増えはじめるこの時期は、私たちの体の中で「血(けつ≒血液)」が増えはじめるとき。日頃から不眠、めまい、記憶力や集中力の低下が気になる人は、穀雨の自然に寄り添いながら、生い茂る緑のように血を増やす東洋医学の養生をとり入れてみませんか?

<前の節気>清明(せいめい) 2026年4月5日~4月19日
<次の節気>立夏(りっか) 2026年5月5日~5月20日

穀雨は「穀物を潤す雨が降る季節」

二十四節気「穀雨」のイメージ。田んぼに雨が降っている
田植えの準備がはじまる穀雨。穀雨の雨は、そんな田んぼに降り注ぐ“恵みの雨”となります 。

2026年4月20日~5月4日は、二十四節気の「穀雨(こくう)」。とうとう春の最後の節気となりました。

穀雨はその名の通り、雨が多い季節です。日本列島に南から温かく湿った空気が流れ込むようになり、これまでのようなひんやりした冷たい雨ではなく、温かい雨がしとしと降るように。空気もしっとりしてきて、乾燥した季節から潤った季節へと移り変わるのを感じられるでしょう。

このしとしとと降る穀雨の雨は、春の乾いた田んぼにじわじわと深く浸透していき、土をやわらかくします。これは、田植え前に田んぼに水を引き入れて土を練り上げる「代掻き(しろかき)」の作業を大いに助ける雨。米農家の人々にとって、穀雨の雨は天からのありがたい“恵みの雨”となります。それは米を主食とする私たちすべての日本人にとっても同じ。穀雨の雨に感謝を捧げたいですね。

穀雨という節気名には、米や麦などの「穀物を潤す雨」という意味があります。きっと、米や麦に水を与えるというだけではなく、「土に穀物を育てる力をもたらす雨」という意味も含まれているのでしょう。

2026~2027年の二十四節気表。穀雨は4月20日~5月4日
春の6番目の節気、穀雨。名残り惜しくも、春が過ぎ去ろうとしています。
二十四節気「穀雨」のイメージ。代掻き(しろかき)の様子
代掻きとは田植え前の乾いた田んぼに水を入れて土を砕き、泥状にしてかき混ぜて平らにならすこと。田植えがしやすくなるだけでなく、雑草を生えにくくして米の育ちをよくする重要な作業であり、穀雨の雨はこの代掻きに欠かせない自然の恵みです。

【穀雨の自然】雨で潤った土壌から新緑が一気に増える

二十四節気「穀雨」のイメージ。雨で潤っている生い茂るクローバーの葉
穀雨の頃になるとクローバーの葉が生い茂ります。葉の間からシロツメグサの白い花が咲く様子も見られるように。

穀雨の頃になると温かく湿った空気が地表付近に流れ込みますが、上空にはまだ冷たい空気が残っているため、激しい温度差から大気が不安定になって雷が発生しやすくなります。雷というと夏のイメージがありますが、この時期にも雷は多く、「春雷(しゅんらい)」と呼ばれる晩春の風物詩のひとつとなっています。

雷が起こると植物にとって肥料となる空気中の窒素が雨に溶け込みやすくなり、栄養たっぷりの甘雨(かんう)となって大地に降り注ぐように。昔から「雷が多い年は豊作」といわれるのはこのためなのです。

春雷(しゅんらい)のイメージ。春に多い「雲放電(くもほうでん)」の様子
春雷は雲の中で光が走る「雲放電(くもほうでん)」が多く、空全体が一瞬フラッシュをたいたように明るくなる光景がよく見られます。
雷によって雨に空気中の窒素が溶け込み、稲の肥料となる説明図
雷の放電によって空気中の窒素は酸素と結びつき、窒素酸化物となって雨に溶け込みます。この雨が田んぼに降り注ぐと、稲の肥料となって成長を促進。こうして雷は稲をよく実らせることから、昔の人は雷を「稲妻」と呼びました。

一方、穀雨の頃になると土も温まってきて地温(土の温度)が15℃を越え、地中の微生物の分解活動が飛躍的に活発になります。ここに穀雨の雨が降ることで土壌中の有機物が溶け出し、それを微生物がどんどん吸収して分解活動が加速。天からもたらされた窒素酸化物と、大地の有機物から生まれた養分とが相まって、雨で潤った穀雨の土は「栄養の海」となっていくのです。

二十四節気「穀雨」のイメージ。穀雨の雨が降り注いで潤う土壌
穀雨の土は、天地の恵みが織り混ざった「栄養の海」に。

「栄養の海」となった土壌に根を下ろす植物は、あふれる栄養を糧に葉をどんどん茂らせ、茎やつるをどんどん伸ばして新緑を勢いよく増やしていきます。そしてその新緑は、次の節気の立夏以降、昆虫類やネズミなどの小動物のエサになり、その昆虫類や小動物はヘビやカエル、小型の鳥類などのエサになり、その小型の鳥類などがタカなどの猛禽類や肉食獣のエサになり⋯⋯春の節気から夏の節気へとバトンタッチされるやいなや、食物連鎖が活発化して生物が大いに繁殖しはじめます。

植物の芽吹きの季節だった春から、生物が繁栄を極める夏へ。その橋渡し役は穀雨の土であり、そこから爆発的に増える新緑の力なのです。

【穀雨の天人合一】体の中の「土」=「脾(ひ)」の働きが活発に

二十四節気「穀雨」のイメージ。人間の脾(ひ)の働きが最もさかんになる
穀雨の季節は、五臓(ごぞう)の「脾(ひ=胃腸)」の働きが1年で最も活発になります。

天人合一(てんじんごういつ)───これは、「天(自然界)と人間は一体である」という意味の東洋医学の言葉。自然と人間はつながっているというもので、この天人合一の言葉の通り、穀雨の季節に起こる自然の変化と同じような現象が人間の体にも現れます。

東洋医学には「五行(ごぎょう)」と呼ばれる考え方があります。五行とは自然界を形成している根源的な5つの要素のことで、その要素とは木(もく)・火(か)・土(ど)・金(きん・こん)・水(すい)の5つ。五行の「行」とは「めぐる」という意味で、この5つの要素が循環することで自然界が成り立っていると考えられています。

五行(ごぎょう)の循環の図。相生(そうせい)の説明図
このように五行は木→火→土→金→水と、それぞれが生み出し合いながら循環しています。この五行の循環は「相生(そうせい)」と呼ばれます。

木は燃料となって火となり、火は燃えつきると灰となって土になり、土の奥深くからは金属が生まれ、金属を含む地下の地層からはミネラル豊富な清水が生まれ、その地層をへて湧き出た水は森を潤して木を育てる──このように、五行は循環しつづけています。

この五行の循環は自然界全体を貫く法則であり、自然に存在するあらゆるものが同じ法則で成り立っているとされています。季節の変化も、人体の活動も、五行の法則で循環していると考えられるのです。

ここで、五行と季節、人間の体(五臓)の関係について紹介しましょう。

五行と季節、人間の体(五臓)の関係図
五行にはそれぞれに特性があり、その特性と共通性を持つものを当てはめることで、季節や人間の体、そして自然界のあらゆるものを5つに分類することができると考えられています。

五行の特性を季節に当てはめると、芽が出て草木が上に伸びていく春は「木」の季節、暑くなり生物が繁栄を極める夏は「火」の季節となります。

では穀雨はどの季節に当たるのでしょうか。春の節気だから「木」の季節ともいえるのですが、穀雨は「春の土用」と重なる時期でもあるのです(下図参照)。

土用とは、土のエネルギーがさかんになるといわれる季節。穀雨の雨によって「栄養の海」と化した土壌が新緑をどんどん生み出すことからも、穀雨は「土」の季節と考えるのがふさわしいでしょう。

「木」の上昇の力が湧き出す春から、「火」の拡大の力があふれる夏へ。その季節の移り変わりに必要なエネルギーを生み出すのが、「土」の力がさかんになる「春の土用=穀雨」なのです。

春の土用、夏の土用、秋の土用、冬の土用の説明図
土用と聞くと夏のイメージがありますが、実は土用とは立春・立夏・立秋・立冬の直前約18日間のことであり、年に4回訪れるもの。土のエネルギーがさかんになり、四季の移り変わりを仲立ちする「つなぎ役」となる季節なのです。 ※日付は2026~2027年のもの

では、そんな「土」の季節である穀雨の時期、私たち人間の体はどうなるのでしょうか。

五臓で五行の「土」にあたるのは「脾」。脾とは飲食物を分解して栄養に変え、ほかの臓器へと栄養を運搬する機能のことで、いわゆる消化吸収機能に当たりますが、落ち葉などの有機物を分解して栄養に変える土と役割が重なりますね。「土」も「脾」も、「生み出す」「養う」「変化させる」といった性質が共通しています。

土の働きがさかんになる穀雨。その穀雨は、脾の働きが最もさかんになる季節でもあるのです。

【穀雨の東洋医学】脾と心が連携して血をさかんに作り出す

脾の主な働きは、飲食物から「水穀精微(すいこくせいび)」を作ること。水穀精微とは消化吸収によって生まれた栄養や水分で、「気(き=エネルギー)」や「血(けつ≒血液)」などの材料となるものです。

次の節気からは夏がはじまり、五臓の「心」の働きがさかんになりはじめます。心の主な働きは、脾から送られた水穀精微をもとに血を生成し、その血を全身にくまなくめぐらせること。夏はより多くの血を全身にめぐらせる必要があるため、より多くの血が必要。つまり、より多くの水穀精微が必要になるというわけです。

食べたものが胃に送られると、脾の働きで水穀精微が作り出されます。そしてその水穀精微が心へと送られると、血が生まれ、全身をめぐって体を養っていきます。

穀雨の季節に脾でさかんに生み出された水穀精微が、心で血となり、体じゅうをめぐってたくましい肉体を作り上げる。活動的な季節である夏に向けて、脾と心が連携して体作りの準備をはじめているのです。

【穀雨の養生】脾と心をサポートして血の生成を高める食材を

穀雨の養生に最適な食材・なつめ
なつめは脾と心の働きをサポートする優秀食材。穀雨の養生に最適です。

脾で水穀精微を作り、それを心へと送って血を生み出す──穀雨の季節は、この一連の流れをサポートする養生がおすすめです。

◉なつめ
脾の働きを補い、さらに心で血を生成する働きも助ける、この時期にぴったりの食材。乾燥なつめが食材店やネットなどで手に入ります。東洋医学発祥の地である中国には、「1日3個のなつめを食べれば、歳をとっても老いが現れない」という言葉もあるほどのスーパーフード。この言葉にならって、1日3個を目安に食べてみてください。

軽く水洗いしたものをドライフルーツとしてそのまま食べることもできるほか、なつめ2~3個をちぎってカップに入れ、沸騰したお湯を入れてふたをして5分ほど蒸らせばなつめ茶が完成。お茶を飲んだ後は残ったなつめも食べるのが効果的です。

そのままのなつめは苦手という人は、市販のなつめチップスを活用して。おやつとしてそのまま食べるほか、シリアルに混ぜたりなつめ茶にしたり紅茶に入れたりと、さまざまなアレンジも楽しめます。なつめチップスは自作することも可能で、乾燥なつめを薄切りにして100度のオーブンで30分ほど焼くと、甘くてカリカリとした食感のなつめチップスができあがります。

◉牛肉、鶏肉
脾の働きを高めて、気や血を増やす力が非常に強い食材です。穀雨の時期は積極的にとるのがおすすめですが、脂っぽい料理は脾に負担がかかるので、蒸し料理や煮物、スープなどの消化にいい形でとり入れるのが◎。

◉スパイスカレー
脾は湿気に弱いという特徴があります。穀雨の季節は雨が多く、湿気も増えやすいので、脾の湿気を追い払う「芳香化湿類(ほうこうかしつるい)」の食材をよくとるといいでしょう。芳香化湿類にはスパイスが多いので、カレーライスなどのスパイス料理がおすすめ。ただし、一般的なカレールーを使ったカレーは小麦粉や油脂が多く、かえって脾に湿気がたまりやすくなるので、さらっとした本格的なスパイスカレーを食べるのが理想的。牛肉や鶏肉のスパイスカレーなら、穀雨にぴったりの薬膳メニューになります。

そのほか、脾の働きを整える米、大豆、いも類などを日常的によくとるといいでしょう。なお、冷たい飲食物は脾を冷やして消化機能の低下につながるので控えめに。

生活養生としては、くよくよしない、考えすぎないこともポイントです。「思い悩む」という感情は脾と深く関わっており、くよくよと考えすぎたり悩み続けたりすると、脾に負担がかかって消化吸収活動の低下を招くことも。悩みが止まらなくなったら散歩をしましょう。手足も脾と深い関わりがあり、手足を動かすことが脾の働きを助け、思い悩む感情を軽くします。

心で作られた血は体じゅうをめぐりますが、特に精神を安定させるための重要な働きがあります。心の血を増やすことで、不眠、めまい、記憶力や集中力の低下、もの忘れなどをやわらげる力強いサポートにもなるでしょう。

おわりに

穀雨の自然と体とのつながりの話、いかがでしたでしょうか。
今回は少し理論の説明が多くなってしまいましたが、五行は人と自然とをつなぐ重要な東洋医学の考え方でもあるので、少しでも多くの人に知っていただけたらうれしいです。

穀雨の季節に、土が「栄養の海」となって緑を増やすことと、脾が「水穀精微」をたくさん作って血を増やすこと。とても似ていると思いませんか? 夏になると緑は食物連鎖の糧となってめぐり、血は心の働きによって体じゅうをめぐって肉体をたくましく作り上げます。

豊かに生い茂る若葉は、私たちの体の中にも「新緑=血」がたくさん生まれているサインかもしれませんね。そんなふうに、自然の中に体を、体の中に自然を感じてみてください。

また、この記事の最後で配布している壁紙(スマホ・PC用)も活用していただき、自然と体のつながりを少しでも身近に感じるきっかけにしていただけたら幸いです。

参考文献:
国立天文台HP 暦計算室 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/
『中国伝統医学による食材効能大事典』(山中一男・小池俊治編、東洋学術出版社刊)
『食薬方剤学』(本草薬膳学院刊)

画像素材:Adobe Stock、Envato、Canva

穀雨の七十二候(※)と月の満ち欠けがチェックできるスマホ用・PC用壁紙です。「自然とのつながり」を感じるツールとして、ダウンロードしてご活用ください。

※七十二候(しちじゅうにこう)とは⋯⋯二十四節気の各節気を約5日ずつ、3つに分けた暦で、気象や動植物の生態の変化にもとづいているのが特徴。約2週間のひとつの節気にもさまざまな変化があり、その変化のグラデーションを色鮮やかに伝えてくれる暦です。

※壁紙は個人利用の範囲でお楽しみください。無断転載・再配布はご遠慮ください。

スマホ用壁紙

「東洋医学で自然とつながる」オリジナルの穀雨カレンダー壁紙(スマホ用)

※お使いの端末に合わせて、設定時にサイズを調整してください。

PC用壁紙

「東洋医学で自然とつながる」オリジナルの穀雨カレンダー壁紙(PC用)

著者プロフィール
TSUBO

国際中医師・国際薬膳師
東洋医学ライター

広島生まれ、東京育ち。2019年より広島県在住。
大学卒業後、雑誌・書籍・WEBコンテンツの編集者をへて、国際薬膳師、国際中医師の資格を取得。現在は「自然と人体のつながり」をテーマに東洋医学ライターとして活動中。

宝島社「大人のおしゃれ手帖WEB」(https://osharetecho.com/writer/50786/)にて「更年期の養生」を連載中。

TSUBOをフォローする
季節と東洋医学
TSUBOをフォローする
タイトルとURLをコピーしました