
2026年3月20日~4月4日は、昼と夜の長さがほぼ同じになる「春分(しゅんぶん)」。
1年で最も風が強くなる季節です。
この「春分の風」が、自然界に多大な恩恵を与えていることをご存知でしょうか?
そして私たちの体の中にも、「春分の風」のような現象が起こっていることを。
この体の中の「春分の風」現象は、この時期に起こりやすいおなかのはり、ガスがたまりやすい、胃のムカつき、腹痛、下痢や便秘、頭痛、めまい、のぼせなどの不調にも深く関連しています。
そこでここでは東洋医学にもとづいて、春分の自然と人間の体とのつながりを独自の視点で探り、季節と調和して自然との一体感を感じられる養生法をご案内していきます。
<前の節気>啓蟄(けいちつ) 2026年3月5日〜3月19日
<次の節気>清明(せいめい) 2026年4月5日~4月19日
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春分は「昼と夜がほぼ同じ長さで、1年で最も風が強い季節」

待ちに待った桜の季節がやってきました。
2026年3月20日~4月4日は、二十四節気(にじゅうしせっき)の「春分(しゅんぶん)」。昼と夜の長さがほぼ同じになる季節です。
「暑さ寒さも彼岸まで」といわれる通り、春分の頃になるとうららかな日が多くなってきます。いよいよ春たけなわとなりますね。

春分は1年で最も風が強くなる季節です。
風とは元来、地球上での熱さと寒さの偏りを中和するために生じる自浄作用。この時期になると日本上空を高気圧と低気圧が交互に通過して寒暖差が激しくなり、この寒暖差を中和するために強風が吹き荒れます。
この時期の風を表す言葉も多く、春に吹く烈風を「春疾風(はるはやて)」、桜の咲く頃に吹く強風を「花嵐(はなあらし)」と呼んだりします。華やかさと力強さが合わさったような、素敵な響きですね。
確かに桜の季節は、強い風が花を散らしてあっという間に終わるのが常。桜がはかない理由のひとつでもあります。

【春分の自然】春分の風は大気や海を撹拌する

春分の風には、「自然界の撹拌(かくはん)」という重要な役割があります。
まずは大気の撹拌。寒い季節の間、地表付近には冷たく重たい空気が沈殿し、ちりや排気ガスなどがたまっていましたが、春分の強い風によって地表付近のよどんだ空気は吹き飛ばされ、入れ替わりに上空の清浄で酸素が豊かな大気が吹き込んできます。このように春分の風は大気を撹拌し、浄化して、生物の生活圏に呼吸しやすい新鮮な空気をもたらすのです。
また、海や湖沼を撹拌する役割もあります。寒い季節に冷たく重たい水とともに海底や湖底に沈み込んでいた有機物(栄養分)が、春分の風によって水面付近まで巻き上げられます。一方で、水面近くの酸素を豊富に含んだ水が、攪拌によって海や湖沼の深部まで運び込まれる。結果、海や湖沼全体に栄養と酸素が行き渡ってプランクトンが急増し、魚類をはじめとする水生生態系が一気に活性化していきます。
広い意味でいうと、春分の風は森林の撹拌も行います。強風は古くなった樹木の幹を倒したり古い枝を落としたりして、暗い森林に光が差し込むすき間を作ります。そして差し込んだ光によって暗かった地面付近の草木が成長し、新たな生命をはぐくむことに。そして風で折れたり倒れたりした古い幹や枝はゆっくりと分解され、その過程でキノコなどの菌類や昆虫に食され、やがて土に還ってゆく。これもまた、春分の風をきっかけに長い年月をかけて行われる撹拌といっていいでしょう。
東洋医学の視点で見ると、春分以前の夜が長い季節は寒い「陰の季節」、春分以降の昼が長い季節は暖かい「陽の季節」。春分はその端境期(はざかいき)であり、陰陽が激しく入れ替わって混ざり合うダイナミックな撹拌が起こるとき。陰の空気と陽の空気が衝突して強い風を生み、自然界を上下左右にかき回し、生命活動を活性化させる。春分とは、新しい生命に息を吹き込む季節なのです。
【春分の天人合一】体の中で起こる「撹拌」とは?

東洋医学には、自然界と人間の体は同じ仕組みで活動しており常に連動しているとする「天人合一(てんじんごういつ)」という考え方が根底にあります。
春分の季節もまたその天人合一の理論の通り、自然界で起こっているダイナミックな撹拌が、私たちの体の中でも起こっています。
冬の間、私たちの体は寒さをしのぐためにエネルギーや栄養分、水分を体外へと漏らさないように深部に蓄え、体表を閉じていました。「閉蔵(へいぞう)」と呼ばれる体の働きです。このときに蓄えていた力を「陰気(いんき)」と呼びます。陰気は冷たく重いため体内の深部で停滞しやすく、長い冬を経るうちに冷えや老廃物もため込んでしまっています。
一方、立春を過ぎて春になると、体内の奥底から芽吹きのように熱気を帯びたエネルギーが立ち上がりはじめます。この力を「陽気(ようき)」と呼びます。
春分までは夜が長くてまだ寒く、陽気の勢いは陰気に押され気味でした。しかし春分を迎えて昼と夜がほぼ同じ長さになってくると、体内の陽気の勢いが一気に強くなり、急激に上昇しはじめるのです。
このとき、体内の奥深くに残っている陰気と、熱を帯びて突き上げてくる陽気とが入り混じり、体の中で撹拌が起こります。そしてこの陰と陽のバランスを整えるために撹拌をサポートすることが、春分の養生のテーマとなります。
【春分の東洋医学】体の撹拌は腹部の肝・脾・胃で起こる

体の中の撹拌は、体の中心部であるおなかで顕著に起こります。腹部には五臓の「肝(かん)」「脾(ひ=栄養の吸収運搬機能)」、六腑(ろっぷ=飲食物を受け取り送って排泄する一連の器官)の「胃」があり、この3つの臓腑が撹拌の中心となるのです。
春分を迎えて体内の陽気の勢いが強くなると、肝によるエネルギーを上昇・発散させる「疏泄(そせつ)」という働きが活発になります。肝の疏泄は五臓の脾の栄養吸収と運搬を助け、脾の活動が順調なことで、胃による消化活動および消化物を小腸へ、未消化物を大腸へと下降させる活動も順調に行われます。
つまり、肝と脾の上昇と胃の下降、この上下の流れがバランスよく行われることで、体の中が正常に撹拌され、次のような状態となり、体全体の調子がよくなるのです。
【体の中が正常に撹拌されている状態】
◉胃腸にガスなどの停滞感がなく、おなかがすっきりと軽く感じられる。決まった時間に心地よい空腹感が訪れる。
◉消化物を下降させる力がスムーズなので、排便もスムーズに。形が整った便がいきまずにつるりと出て残便感がない。
◉頭部へのエネルギー上昇がスムーズなので、頭がすっきりとして思考がクリアになる。目も疲れにくい。
◉撹拌されたエネルギーが手足の末端まで行き渡り、手足を自然と動かしたくなる。歩幅が自然と広がり、足取りが軽くなる。
しかし、肝の上昇する力が強すぎて脾や胃の抑えられる、または肝の上昇する力が不足して脾や胃の働きが乱れてしまうなど、3つの臓腑のバランスが崩れて体内の撹拌がうまく行われなくなると、次のような不調が見られるようになります。
【体内の撹拌が正常に行われていない状態】
◉おなかが張る、ガスがたまる、げっぷがよく出る
◉食後に胃が重くなる、ムカムカする
◉緊張するとおなかが痛くなる、下痢と便秘を繰り返す
◉わき腹が張る、深呼吸がしにくい
◉頭痛、めまい、のぼせなどが見られる
◉目が充血する、乾燥する
◉気分がイライラする、落ち着かない
撹拌の中心となる腹部は、体にとって回転軸にあたる場所。自転する地球の地軸のような場所ともいえます。季節の節目となる春分の時期に、この体の自転軸がブレないように肝、脾、胃のバランスを整える養生を行っていきましょう。
【春分の養生】肝脾の上昇と胃の下降を整える食材&ツボ

①肝の疏泄をスムーズにする「レモン白湯」
レモンなどの柑橘類の皮に含まれる香り成分には、肝の疏泄を促す作用が期待できます。そこでおすすめなのが、柑橘類の皮やスライスを白湯に入れた「柑橘白湯」。ここでは最も手軽な「レモン白湯」をご紹介します。
作り方は簡単で、レモンを1~2枚スライスしてマグカップに入れ、お湯を注ぐだけ。このとき、スライスする前に切る部分の皮の表面をフォークの先で軽く突いておくと、香り成分がよくしみ出します。お湯を注いでふたをし、30~1分ほどしたら完成。飲む前に湯気と一緒に立ち上がる香りを深く吸い込むと、疏泄を促すスイッチとなります。レモンは無農薬のものを選ぶか、皮表面のワックスなどを塩でこすって洗い落としてからスライスしましょう。
なお、レモンの酸味には収れん作用があり、肝の疏泄を抑える働きがあります。レモン汁を多く加えたりレモンの果肉が多くなりすぎたりすると、収れん作用が強くなってしまうので、レモン汁やレモン果肉を追加しすぎないようにしましょう。

②脾の働きを強くする「足三里(あしさんり)」のツボ
「足三里(あしさんり)」はひざの皿の下の外側のくぼみから指4本分下にある、脾の働きをよくする代表的なツボ。ここを指先で押したりお灸をすえたり、カイロで温めたりすると、脾と胃の働きを助けることができ、おなかのはり、腹痛、下痢や便秘などの緩和に役立ちます。

③胃の下降の働きを助ける食材をとる
大根やかぶは、胃の下降の働きを助ける代表的な食材です。特に生の大根おろしは消化を助け、胃腸の下降の促す力が強いのでおすすめ。積極的にとるといいでしょう。また、胃に負担をかけないためには腹八分目を徹底することも効果的。胃に余白を作ることで、体内の撹拌がスムーズに行われます。

おわりに
春分の季節の自然と体とのつながりの話、いかがでしたでしょうか。
桜を散らす「春分の風」のような現象が、この時期の私たちの体の中でも起こっているんですね。
記事冒頭のビジュアルに記した「体をめぐる、春の風。」というフレーズを、春分の期間、気に留めてみてください。そして桜の花が風に吹かれているのを目にしたときは、その風が体の中にもめぐっていて、おなかのあたりで撹拌が起こっていることを想像してみてください。きっと、自然と体はつながっているんだと、感じていただけるのではないでしょうか。
春分は昼(陽)と夜(陰)の長さがほぼ等しい「陰陽調和(いんようちょうわ)」の季節です。
肝・脾・胃の撹拌がスムーズにバランスよく行われることが、体内の陰陽バランスを整えることに直結していきます。
この記事の最後で配布している壁紙(スマホ・PC用)も活用していただき、自然と体のつながりを少しでも身近に感じるきっかけにしていただけたらうれしいです。
参考文献:
国立天文台HP 暦計算室 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/
『鍼灸学[経穴篇]』(天津中医薬大学、学校法人衛生学園 編、東洋学術出版社)
『中国伝統医学による食材効能大事典』(山中一男・小池俊治編、東洋学術出版社刊)
『食薬方剤学』(本草薬膳学院刊)
画像素材:Adobe Stock、Envato、Canva
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