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【暦とからだ|秋分】月が満ちれば、体も満ちる。月のリズムで整える「陰」の養生

二十四節気「秋分(しゅうぶん)」のイメージ。夜空に浮かぶ満月と月影(ムーンロード)が映る海

2026年9月23日~10月7日は、二十四節気(にじゅうしせっき)の「秋分(しゅうぶん)」。昼と夜の長さがほぼ同じになり、ここから夜が少しずつ昼より長くなっていきます。
夜が長くなりはじめるこの時期は、月が主役の季節。今年は秋分の期間に、中秋の名月(9月25日)と満月(9月27日)を迎えます。

東洋医学では、月は人間の体に多大な影響を与えると考えられてきました。月の満ち欠けと私たちの体には、どんなつながりがあるのでしょうか。かぜ予防や夏の疲労回復、安眠、肌や髪のツヤUPにもつながる、秋の夜長の養生をご案内します。

ここでは東洋医学にもとづいて、秋分の自然と人間の体のつながりを独自の視点で探り、季節と調和して自然との一体感を感じられる養生法をご案内していきます。自然の中に私たちの体を、私たちの体の中に自然を見出してみてください。

<前の節気>白露(はくろ) 2026年9月7日~9月22日

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秋分は「昼と夜の長さがほぼ同じになる季節」

二十四節気「秋分(しゅうぶん)」のイメージ。夕日が地平線に沈む
秋分の季節のはじまりである「秋分の日」は、太陽がほぼ真西へと沈んでいきます。

2026年9月23日~10月7日は、二十四節気の「秋分(しゅうぶん)」。初日の9月23日は「秋分の日」で、太陽が真東から昇り真西に沈んで、昼と夜の長さがほぼ同じに。そしてこの日を境に、夜のほうが昼より長くなっていきます。

秋分の日を中日とする前後3日間、9月20日~26日は秋のお彼岸です。「暑さ寒さも彼岸まで」といわれるように、この頃から日中の暑さもようやくやわらぎ、朝晩は秋らしさが深まります。

2026~2027年の二十四節気表。2026年の秋分は9月23日~10月7日
秋分は秋の4番目の節気。その初日の秋分の日が、秋の節気の折り返しになります。

お彼岸の風物詩といえば彼岸花(ヒガンバナ)。毎年お彼岸の頃にいっせいに咲きはじめ、公園や川岸などを真っ赤に染めます。

不思議なのは、花が咲いているときに葉が1枚もないこと。彼岸花は花が咲き終わってから細い葉を伸ばすのです。花と葉が同時に見られないことから、「葉は花を見ず、花は葉を見ず」といわれるのだとか。決して交わることのない彼岸(=あの世)と此岸(しがん=この世)を象徴しているかのようですね。

二十四節気「秋分(しゅうぶん)」のイメージ。彼岸花(ヒガンバナ)
お彼岸の頃、真っ赤に咲きそろう彼岸花。咲く期間は1週間ほどと短いのも特徴です。

秋分の時期は米の収穫期でもあります。処暑の頃から少しずつ色づきはじめた稲穂は、いよいよたわわに実って黄金色に輝くように。稲は穂が出てから約40~45日後が刈り取りの時期で、地域や品種によって差はあるものの、多くの地域が秋分の頃に稲刈りの最盛期を迎えます。

二十四節気「秋分(しゅうぶん)」のイメージ。黄金色に色づき、収穫の時期を迎えた米の稲穂
収穫のときを迎えた稲穂。「実りの秋」の象徴です。

【秋分の自然】お月見の季節。月は「海の満ち引き」も生んでいる

月の満ち欠け
新月→上弦の月→満月→下弦の月、という月の満ち欠けは、約29.5日周期で繰り返されています。

秋分はお月見の季節でもあります。最も月が美しい日といわれる中秋の名月は、今年は9月25日。なぜこの時期にお月見をする風習が生まれたのかというと、夏の湿った空気が過ぎ去って空気が澄み月が美しく見えること、月が高すぎず低すぎない位置に昇り見上げるのにちょうどいいこと、収穫の秋を迎えたことへの感謝とともに月をめでる風習があったこと、などが理由だといわれています。

その美しい月は、海とも深く関係しています。

海の上に浮かんだ月は、その引力によって海面を引っ張り上げるため、海水が盛り上がって満ち潮を生み出します。また、月が浮かんでいる面と反対側(地球の裏側)の海も、遠心力によって海水が盛り上がって満ち潮に。月が真上に昇っている地球の面を表とすると、地球の表と裏で満ち潮となり、その中間点は引き潮になります。そのため、地球が24時間かけて自転する間に、満ち潮→引き潮→満ち潮→引き潮と、干満を2回くり返すのです。

月の引力と潮の満ち引きの関係
月が海の真上に昇ると、引力によって海面が盛り上がり満ち潮になります。そしてその地球の裏側も遠心力で満ち潮に。一方、満ち潮になっている場所から見て90度の方向にあたる場所は引き潮になります。

さらに、月と太陽がほぼ一直線に並ぶ新月と満月の頃は、海水を引っ張る力が大きくなるため、満ち潮はより高く、引き潮はより低くなって干満の差が大きくなる「大潮(おおしお)」になります。一方、月が半分に見える上弦・下弦の頃は、月と太陽が別々に海面に力を及ぼすため、干満の差が小さい「小潮(こしお)」に。つまり、月の満ち欠けが一巡する間に、大潮→小潮→大潮→小潮と2回繰り返されるわけです。

月と太陽の引力と大潮と小潮の関係
月と太陽がほぼ一直線に並ぶ新月と満月は、月の引力に太陽の引力が重なるために海面を引っ張る力が大きくなって大潮に。一方、上弦の月や下弦の月のときは太陽と月が直角の位置関係になり、引力が打ち消し合うために小潮となります。

海の生物は、こうした月の満ち欠けによる潮の変化を、刻一刻と肌で感じながら生きている⋯⋯ということになります。

例えば、タイやスズキなどの魚は、エサを求めて満ち潮のときは岸の近くまで移動し、引き潮のときは沖に移動するといわれています。干潟のカニは引き潮になると巣穴から出てきてエサとなる藻類を食べ、満ち潮になると巣穴にこもって外敵から身を守ります。そしてサンゴが初夏の満月の夜に産卵をするように、満月や新月に産卵をする生物も。海で生きる生物にとって、月の満ち欠けに合わせて生きることは生存競争を生き抜く上で欠かせないものなのです。

干潟のシオマネキ
潮が引いて巣穴から姿を表しているシオマネキ。潮が引いた後の泥に含まれているプランクトンなどをはさみでつまんで食べます。潮が満ちてくると巣穴に戻り、泥で入口にふたをして閉じこもります。ちなみに、片方の大きなはさみが満ち潮を手招きしているようだ⋯⋯というのが名前の由来です。

人間は陸上で暮らしていますが、私たちの祖先は約40億年前に海で誕生し、陸に上がってきたのは約4億年前。陸よりも海で暮らしていた時間のほうが圧倒的に長いのです。潮の満ち引きを生む月のサイクルが、古い記憶として体の奥深くに刻み込まれている──そう考えられているのも、決して不思議ではありませんね。

【秋分の天人合一】月の満ち欠けで、私たちの体も満ち欠けする?

二十四節気「秋分(しゅうぶん)」のイメージ。月の力に体が呼応しているイメージ
私たちの体の中にも自然が広がっている……この考え方を東洋医学では「天人合一(てんじんごういつ)」と呼びます。

天人合一(てんじんごういつ)───これは、「天(自然界)と人間は一体である」という意味の東洋医学の言葉。この天人合一の言葉の通り、秋分の季節に起こる自然の変化と人間の体には、不思議なつながりがあります。

月の満ち欠けが海を動かしているのなら、人間の体にもなにかが起こっているのではないか⋯⋯こうした考え方は、世界各地で古くから存在していました。東洋医学(中医学)発祥の地である中国も同様で、約2000年前に編纂された中国最古の医学書『黄帝内経(こうていだいけい)』には、人々は天地や太陽・月の影響を受けて生きている、と記されています。
その黄帝内経によると、月の満ち欠けにあわせた体の変化は次のようにとらえられています。

◉満ちゆく月の時期
新月を過ぎ、満月に向かって月が満ちてゆく時期は、体内で「気(き=エネルギー)」や「血(けつ≒血液)」が活発に生成され蓄積されるとき。そしてそのめぐりもよくなり、体表面で体を守るエネルギーである「衛気(えき)」の働きも強くなって、不調や病気に対する抵抗力が次第に高まっていきます。肌にはハリや弾力、つやが生まれ、髪はよく伸び、健康的な肉づきとなります。

◉満月の時期
気と血が最も充実するときで、肌や筋肉が引き締まります。衛気の働きが最も強くなり、不調や病気に対する抵抗力も最大となります。

◉欠けゆく月の時期
月が新月に向かって欠けてゆく時期は、気と血の量は徐々に減少し、そのめぐりも悪くなっていくとき。衛気の働きも弱まって不調や病気に対する抵抗力も低下しやすくなります。また、肌や筋肉のハリが失われ、肌のきめが荒くなってつやがなくなり、髪も抜けやすくなります。

◉新月の時期
気と血が最も減少するときで、肌や筋肉が最も弱い状態になります。不調や病気に対する抵抗力も最も少なくなり、急な体調不良が起こる場合もあります。

このように古代の人々は、月の引力で海が満ち引きを繰り返すように、人間の体内でも気と血が満ち引きのようなリズムを繰り返していると考えていたわけです。

月と体とのつながりを感じさせる話は、現代の私たちの身近にもあります。

例えば、新月と満月の時期は赤ちゃんが生まれやすいといわれていたり、女性の平均的な月経周期(約28日)は月の満ち欠けの周期(約29.5日)とよく似ていたり。満月の夜は寝つきが悪い、気持ちが高ぶる、といった話を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。

科学的には、月が人間の体にどこまで影響を与えているのか、まだ解明されていません。それでも昔から人々は、月の満ち欠けと心身の間になにかつながりがあることを感じとってきました。そして東洋医学では、そのつながりを養生に活かしてきたのです。

【秋分の東洋医学】「陰の季節」のはじまり。月が養生の道標に

東洋医学には、「陰陽論(いんようろん)」という考え方があります。自然界のあらゆるものは「陽(よう)」と「陰(いん)」に分けられるというもので、陽は明るい、熱い、活発などの性質を、陰は暗い、冷たい、静かなどの性質をさします。主な分類は下図のようになります。

自然界・人体の陰陽分類表
東洋医学では万物は陰と陽で成り立っていると考えられています。なお、「津液(しんえき)」とは体を潤す体液などの水分をさします。

陽を象徴するのは太陽であり、陰を象徴するのは月。太陽が出ている昼は陽の時間であり、月が出ている夜は陰の時間。そして、昼が夜より長い季節は陽の季節、夜が昼より長い季節は陰の季節となります。
つまり、春分から秋分までは昼が夜より長い陽の季節であり、秋分から次の春分までは夜が昼より長い陰の季節。秋分は、陰の季節のはじまりなのです。

季節における陰陽の変化のグラフ
「陰気」とは陰の力、「陽気」とは陽の力をさします。陰気と陽気の強弱は常に変化しており、秋分からは陰気が陽気よりも強くなる「陰の季節」となります。

海に満ち引きをもたらすように、私たちの体の内側にも満ち引きのリズムをもたらす月。
月が美しくなり、私たちを照らす時間が長くなって、より多くの影響をもたらすようになる陰の季節。
そのはじまりである秋分は、月の満ち欠けを意識した養生がおすすめです。

月は陰の象徴ですが、人間の体における陰とは「血」「潤い」「栄養」「鎮静」になります。そのため月を意識した養生は、体に潤いと栄養を補い、ストレスや興奮を静めて疲労を回復する助けとなるでしょう。特に朝晩の冷え込みや乾燥が強まる秋分においては、かぜ予防、夏の疲労回復、安眠、肌や髪のうるおいとつやなどのサポートになります。

【秋分の養生】月の満ち欠け養生で、夏の疲労回復と秋のかぜ・乾燥予防

今年の秋分の日は、新月から13日目の満ちゆく月。ここからはじまる「満ちゆく月」→「満月」→「欠けゆく月」→「新月」というサイクルに合わせて食養生、ツボ養生、生活養生などをとり入れて、かぜ予防や夏の疲労回復、安眠、肌や髪のうるおいUPなどをサポートしていきましょう。

満ちゆく月の時期(9月23日~26日)

気と血が作られ、蓄えられていく時期です。気と血を補うことを意識した養生で、不調に対する抵抗力や肌のハリ・つやを、しっかりと育てていきましょう。

【食養生】
鶏もも肉、牛もも肉、さけ、いも類、にんじん、ほうれん草など、気や血を補う食材を多く選びましょう。

<おすすめメニュー例>
・鶏もも肉の照り焼き
・さけのちゃんちゃん焼き
・ほうれん草のごま和え

【ツボ養生】
胃腸の働きを助けるツボで、気や血の生成を促進する「足三里(あしさんり)」を刺激しましょう。ひざの皿の外側のくぼみから指4本分下、すねの骨の外側の際にあります。

息を細く長く吐きながら、イタ気持ちいいと感じる力加減で、親指で3~5秒押します。息を吸いながらゆっくり力を抜き、左右それぞれ5回ずつ繰り返しましょう。

足三里(あしさんり)のツボの位置

【生活養生】
・体の中から新しい気と血が湧き出すときなので、活動的に過ごすのがおすすめです。早起きをして、朝日を浴びながら散歩をしたり、軽い運動をしたりして体を動かしましょう。
・9月25日の中秋の名月にはお月見を楽しむのもいいでしょう。夜空を見上げてゆったり過ごす時間そのものが、陰を養う養生になります。

満月の時期(9月27日)

気と血が最も充実している半面、頭に気が上りやすい時期です。高ぶりがちな気を下ろし、頭で滞った熱を適度に冷まして、心身を落ち着かせましょう。

【食養生】
豚バラ肉、貝類、春菊、白菜など、高ぶった気を下ろして余分な熱を冷ます食材を選びましょう。気と血の生成がピークを迎えているので、栄養が過剰にならないように腹八分目を心がけてください。

<おすすめメニュー例>
・あさりの酒蒸し
・春菊のおひたし
・豚バラと白菜の重ね蒸し

【ツボ養生】
ほてりやイライラ、不安感などを静めて落ち着かせる「湧泉(ゆうせん)」のツボ押しを、就寝前に行いましょう。足の指をギュッと曲げたときに一番へこんでいる場所にあるツボです。

湧泉のツボに両手の親指を重ねて置き、息を細く長く吐きながら、イタ気持ちいいと感じる力加減で3~5秒押します。息を吸いながらゆっくり親指の力を抜き、左右それぞれ5回ずつ繰り返しましょう。

湧泉(ゆうせん)のツボの位置

【生活養生】
・日没後は照明を少し落とし、スマホやパソコンの画面を見る時間を減らしましょう。気が高ぶって寝つきが悪くなりやすいときでもあるので、早めに休む準備を。
・ぬるめ(38~40℃)のお湯にゆっくりつかり、ゆったりとリラックスしましょう。
・就寝前には、窓辺やベランダで月を眺めながらゆっくり深呼吸をするのもおすすめ。口から細く長く息を吐くと、高ぶった気持ちも落ち着いてきます。

欠けゆく月の時期(9月28日~10月7日)

気と血の生成が徐々に低下し、衛気の働きも弱まっていきます。不要なものを手放す時期なので、胃腸の働きを助けて水分代謝を促す養生が適しています。

【食養生】
鶏むね肉、だいこん、たまねぎ、海藻類(わかめ・ひじき)など、胃腸に負担がかかりにくい食材を選びましょう。

<おすすめメニュー例>
・大根と鶏むね肉の煮物
・わかめとねぎのみそ汁
・ひじきの煮物

【ツボ養生】
水分代謝をととのえる「陰陵泉(いんりょうせん)」を刺激しましょう。内くるぶしからすねの骨の際を上に向かってなぞっていくと、ひざの少し下に骨の出っ張りがあって指がぶつかって止まり、その出っ張りの下にあるへこんだ部分にあるツボで、脾の働きを強くして、水分代謝を高めるとされています。

息を細く長く吐きながら、イタ気持ちいいと感じる力加減で、親指で3~5秒押します。息を吸いながらゆっくり力を抜き、左右それぞれ5回ずつ繰り返しましょう。

陰陵泉(いんりょうせん)のツボの位置

【生活養生】
・不調に対する抵抗力が低下しやすいときなので、かぜ予防を意識して首元や足元を冷やさないようにしましょう。朝晩の冷え込みにも注意を。予定を詰めすぎないことも大切です。
・肌のつやが失われやすいときなので、入浴後は肌がしっとりしているうちに保湿を。
・頭皮マッサージもおすすめです。両手の指の腹を生え際に当て(爪は立てない)、頭皮をこするのではなく頭皮全体をやさしく動かすイメージで、ゆっくり小さな円を描きながら、生え際→頭頂→後頭部とマッサージ。1~3分ほど行いましょう。

補足:新月(10月11日)

新月は、次の節気の「寒露(かんろ)」の期間(10月8日~10月22日)に訪れます。気と血が最も少なくなり、不調に対する抵抗力も最も弱くなるときなので、休むことが一番大切です。

【食養生】
かぼちゃ、やまいも、白身魚など、胃腸に負担をかけず、内側からおだやかに温める食材を選びましょう。飲みものも温かいものを選んで。

<おすすめメニュー例>
・かぼちゃのおかゆ
・白身魚のスープ
・やまいものみそ汁

【ツボ養生】
おへその指4本分下にある「関元(かんげん)」は、気を補い、体を内側から温めるとされるツボです。この時期は強い刺激を避け、両手のひらを重ねて下腹に当て、ゆっくり呼吸をしながら温めるだけで十分です。

関元(かんげん)のツボの位置

【生活養生】
・できるだけ予定を入れないようにしてオフの日として過ごし、心身のリセットにあてましょう。
・しっかり睡眠をとりましょう。
・激しい運動や過労、夜ふかしなどの体に負担がかかることは避けましょう。
・胃腸にも負担をかけないように、甘いものや脂っこいもの、味の濃いものなどを食べすぎないように気をつけて。

おわりに

秋分の自然と体とのつながりの話、いかがでしたでしょうか。

月の引力が生み出す、潮の満ち引きのサイクル。実は私たちの祖先が海から陸へと上陸していく過程のなかで、潮の満ち引きは重要な役割を果たしていました。

水深が浅い陸地近くは、日光が届いて水温も高く、エサとなる藻類やプランクトンが豊富な暮らしやすい環境だったと考えられています。そんな水際で生活していた生物たちは、あるとき、引き潮によって岸辺に取り残されるようになりました。さて、どうするか。

まだ見ぬ世界である陸に進むか。
それとも今までいた海に戻るか。

水辺の生物たちは、潮の満ち引きのたびに逡巡していたかもしれません。

しかしとうとう、私たちの祖先はある引き潮のタイミングで陸への第一歩を踏み出し、新しい世界を切り開きました。陸上生活のはじまりです。
月は、この大きな進化の道標でもあったわけです。

現在、陸で生活する私たちを支配するのは太陽のリズムです。しかしその奥にはきっと、古代生物の命運を左右した月のリズムがひっそりと息づいているかもしれません。月が美しい秋分は、月と呼応する「体の奥の潮騒」に耳を澄ませてみたいですね。

参考文献:
国立天文台HP 暦計算室 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/
国立天文台「中秋の名月(2026年9月)」 https://www.nao.ac.jp/astro/sky/2026/09-topics03.html
海上保安庁「各地の潮汐(潮の満ち引き)」 https://www1.kaiho.mlit.go.jp/KAN8/sv/teach/kaisyo/tide2.html
『黄帝内経 素問』(八正神明論篇)、『黄帝内経 霊枢』(歳露論篇)
『中国伝統医学による食材効能大事典』(山中一男・小池俊治編、東洋学術出版社刊)
『食薬方剤学』(本草薬膳学院刊)
『針灸学[経穴篇]』(天津中医薬大学、学校法人衛生学園 編、東洋学術出版社刊)
『海・呼吸・古代形象』(三木成夫著、うぶすな書院刊)

画像素材:
Adobe Stock、Envato、Canva

著者プロフィール
TSUBO

国際中医師・国際薬膳師
東洋医学ライター

広島生まれ、東京育ち。2019年より広島県在住。
大学卒業後、雑誌・書籍・WEBコンテンツの編集者をへて、国際薬膳師、国際中医師の資格を取得。現在は「自然と人体のつながり」をテーマに東洋医学ライターとして活動中。

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